ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞・肝細胞を用いてプロポフォール高用量・長時間曝露による影響を検討した。 ヒトiPSC由来心筋細胞・肝細胞に対し、プロポフォールを48時間曝露した後、細胞傷害に関する指標、エネルギー代謝関連の指標の測定と関連遺伝子の発現を検索するため、PCR-Arrayを施行した。 ヒトiPSC由来心筋細胞では、10μg/ml以上の群において有意に、細胞生存率・ATP産生・NAD+/NADH比・ミトコンドリア膜電位の低下とオートファジー活性の上昇を認め、50μg/ml 群における細胞生存率は20.7%低下した。ミトコンドリア呼吸鎖のタンパク遺伝子(NDUFS8、SDHB)の有意な発現低下を認めた。プロポフォール50μg/ml群において、共焦点顕微鏡観察では多数のオートファジー空胞を認め、電子顕微鏡所見では、ミトコンドリアの分裂像、オートファゴソーム像、さらには細胞質内の空胞を認めた。 ヒト iPSC由来肝細胞を用いた実験では、2ug/ml以上の群において、ATP・NAD+/NADH比・ミトコンドリア膜電位の低下を有意に認め、10μug/ml 以上の群では細胞生存率が低下した。また、ミトコンドリア呼吸鎖の構造タンパク遺伝子(NDUFS8、SDHB)の発現低下を認めた。50ug/ml群において、共焦点顕微鏡観察ではミトコンドリアの断片化を認め、電子顕微鏡所見では、ミトコンドリア内腔の不鮮明化やオートファゴソーム像を認めた。 プロポフォールの高容量・長時間曝露により、心筋細胞および肝細胞において、オートファジー反応の増加を伴う細胞死が認められ、原因の一つとして呼吸鎖タンパク遺伝子の発現低下を伴うミトコンドリア機能の低下が示唆された。
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