研究課題
基礎医学系の動物実験に最も頻用されている、齧歯類の代表であるラットの脳波測定並びにBispectral Indexのモニタリング手段を確立させ、麻酔薬と、全身麻酔中に併用される他薬剤との相互作用の薬力学特性を、麻酔開始、麻酔終了、覚醒、の過程を通じて、経時的に記録、解析出来る態勢を整えた。臨床の場面で広く使用されているプロポフォール、セボフルラン、デクスメデトミジンを実験動物に投与し、麻酔薬と鎮静薬との相互作用に関して、新たな知見を得た。予備実験では、プロポフォールにによる静脈麻酔に関しては正確な測定が困難と考えていたが、実験系の精度を高めた結果、Bispectral index、spectral edge frequencyは量(濃度)依存性に減少し、amplitudeが増加する事を確認した。吸入麻酔薬(セボフルラン)と相乗的な反応を示すブチロフェノン系の抗精神病薬であるハロペリドール、ドロペリドール、メトクロプラミドとの相互作用を解析し、これらの薬剤がセボフルランで麻酔中のBispectral Indexを大きく変化させる一方、全身麻酔からの覚醒に関しては経時的な脳波変化が、実際の覚醒状態と異なる現象を見出した。これらの結果の一部は、平成30年度6月のEuroanaesthesia 2018(ヨーロッパ麻酔科学会)の演題として採用され、発表を予定している。平成30年度のAmerican society of Anesthesiologistsの年次総会にも、抄録を提出した。関連する領域の研究成果についても、英文誌への掲載が決定している。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、研究者の施設異動と重なり、病院の診療業務との調整も難しく、やや遅延が有ったが、平成29年度後半はおおむね順調に進展しており、国際学会での発表機会も得た。関連する、臨床的な研究に関しても成果の掲載が確定し、進捗状況は良好と考える。病院診療業務の調整も平成29年度10月に調整が行われ、29年度後半は新しい知見を得られるだけの成果を達成する事が出来た。今後は十分な研究活動が継続的に行われると判断している。血中薬物濃度の測定に関しては、次年度に必要な機材を調達する予定で、準備を進めている。
引き続いて、薬物相互作用を経時的に観察、証明するモデルの開発に取り組む事を予定する。29年度は吸入麻酔薬の薬力学に注目していたが、30年度は、以前より研究を続けている静脈麻酔薬の特性に関しても、研究を推進したいと考える。特に、病院の麻酔科臨床診療に関連する、麻酔薬とメジャートランキライザーと呼ばれる鎮静薬との相互作用に関しては、本年度、明確な知見を得る事が出来た事から、平成30年度は、より詳細かつ正確な実験結果を得て、成果を得たい。また、薬物の血中濃度測定に関しても、次年度で必要な機材を調達して、相互作用の裏付けとなる薬力学的な結果を得る事を予定している。
医学部附属病院の診療業務との調整が難しく、麻酔薬の血中濃度測定に関しては研究がやや遅延した。消耗品費は使用額が少なくなった。麻酔薬の血中濃度測定に関しては、やや高額な実験器具、装置を用いる計画であり、平成30年度に必要な機材を調達する予定として準備を進めている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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