今回の研究を通じて、薬物生体相互作用の多次元行列を用いた解析による、新薬力学モデルの開発に注力し、経時的変化を因子に取り入れた、新しい薬物動態学の概念を提案する事が出来た。 薬物の相互作用に関して、臨床の場面にも応用が可能な新しい薬物投与方法、治療方法が提案出来た。特に、短時間作用型の麻酔薬と、相乗的に作用する薬物との効果発現に関して詳細な解析を行い、多くの知見を得た。単一の薬剤では、その薬力学、薬物動態学的限界から、限界と理解されて来た薬物の作用、経過が、複数の薬物を適切に組み合わせ、その相互作用を利用する事で、安全で遥かに適切な特性を得られる事を証明した。中でも、本邦で開発されながら単独では臨床応用が行われていない薬物と、現在広く全身麻酔等に用いられている薬物との組み合わせは、それぞれの少量の投与で、相互作用を利用して十分な麻酔作用を発揮する事を確認すると共に、これを繰り返し投与しても、麻酔或いは超急性期医療では有害と考えられる、半減期の延長を生じない結果を見出した。これは、例えば、繁忙な臨床の現場に於いて、速やかな効果の消失によって、手術室や集中治療室等の、医療資源を多く必要とする部門等からの移動が容易となる。 これまでの結果は国際学会等で発表しており、多くの興味を集め、評価されてきた。初期成果の一部は出版済みであるが、今後、さらに解析を行いながら論文を作成して投稿し、出版を通じて成果を公開する予定である。
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