薬物の機序的膜相互作用に基づいた麻酔薬応答能の個人差を検証するため全身、ならびに局所麻酔薬の膜流動化作用を解析し、食生活や生活習慣病などの後天的素因がどのように影響するのかを検討した。その結果、以下のような成果を得た。 最終年度研究成果:全身麻酔薬デクスメデトミジンのα2受容体親和性は、膜脂質内のコレステロール、特にその3位水酸基の立体配置が大きく影響すると考えられた(研究発表:Journal of Advances in Medicine and Medical Research:29(11))。食生活や生活習慣病により増加すると考えられる膜コレステロールの薬理機序への影響を近年周術期鎮痛薬として注目されているアセトアミノフェンやNSAIDsにも広げて検討した(研究発表:Journal of Advances in Medicine and Medical Research:31(9))。 研究期間全体を通した成果:種々の麻酔薬が生体膜に作用し、その作用強度は臨床的な鎮静、鎮痛および交感神経作用等と強い相関を示すものもあれば、逆に心毒性などの薬物固有の有害作用との関連を示唆するものも見られた。食生活による膜活性への影響として、ハーブやサプリメントに含まれる成分の直接的効果を総括した(研究発表:Reviews and Reports Press)。生活習慣病による細胞膜脂質組成内のコレステロールの増加は、単に麻酔薬の膜作用を強めるだけでなく、薬物のキラル活性に強く関係することを実験的に証明した(研究発表:Molecules)。コレステロールの化学構造式が全身麻酔薬デクスメデトミジンの麻酔・鎮痛作用に関連することを実験的に明らかにした(研究発表:Journal of Advances in Medicine and Medical Research:29(11))。
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