• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

成人低酸素症に対する100%酸素蘇生による臓器障害発生機序とその治療戦略の確立

研究課題

研究課題/領域番号 16K10935
研究機関神戸大学

研究代表者

植木 正明  神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20213332)

研究分担者 冨田 修平  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00263898)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード心肺蘇生 / 低酸素 / 100%酸素 / 脳障害 / 炎症性サイトカイン / アポトーシス
研究実績の概要

成人の低酸素症時の100%酸素による再酸素化後の脳機能に及ぼす影響をした。実験には生後8週例雄のマウスを使用し、マウスに8%酸素30分曝露後、30分間の100%酸素及び空気で蘇生を行い、9時間後の脳炎症性サイトカイン、アポトーシス、脳エリスロポイチン、脳由来神経栄養因子などのmRNAレベルで検討した。さらに24時間後のヘマトキシン・エチレン染色による脳組織病理的に検討した。実験方法は、自家製の低酸素ボックスで空気(CT群)または8%酸素30分曝露後を行い、8%酸素暴露群にはさらに、その後100%酸素30分間曝露群(HP100群)と空気30分間曝露群(HP21群)に分けた。
1.9時間後のHP100群ではHP21群およびCT群に比べて、有意に、caspase-3 mRNA発現が上昇したが、BDNF mRNAはCT群に比べてHP21群ともに、低下していた。一方、低酸素刺激で誘導されるEPO mRNAは、HP21群はCTに比べて産生が誘導されていたが、HP100群は誘導が抑制されていた。
2.24時間後の脳組織病理的検討では、3群ともに有意な脳神経変性などは、認められなかった。
以上より、8%低酸素後の空気による再酸素化は、低酸素時に誘導される低酸素誘導転写因子(HIF-1)によるエリスロポイチン産生誘導により、障害を受けた脳神経細胞は修復されたが、100%酸素による再酸素化では、内因性エリスロポイエチンの産生増加を抑制し、脳アポトーシスによる脳障害を修復できなかったと推測された。本結果は、新生児低酸素蘇生時での空気蘇生が推奨されているのと同様に、成人でも空気蘇生が有効である可能性を示唆している。さらに、今後、成人での100%酸素蘇生による脳神経発達障害機序の解明とその治療法の解明に役立つものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

成人での低酸素後の再酸素化時に、100%酸素による脳障害が起こっていることが判明し、その機序に、脳神経発達障害機序に、脳内の炎症性サイトカイン産生増加、エリスロポイチン産生誘導低下、アポトーシスなどが関与していることが判明したことから、おおむね順調に研究は進展している。

今後の研究の推進方策

成人での100%酸素蘇生による脳神経発達障害機序に、脳内の炎症性サイトカイン産生増加、エリスロポイチン産生誘導低下、アポトーシスなどが関与していることが判明した。今後その治療法には、これらの機序に関係していると思われる、炎症性サイトカイン抑制、エリスロポイエチンの外的投与、抗アポトーシス薬剤の投与などの、治療法の可能性が示唆されたので、次年度以降に、その治療法の検討とともに、腎臓、肝臓での100%酸素による影響を検討していく。
最終的には、成人での心肺蘇生ガイドラインでの酸素投与についての有益なエビデンスとなるよう、研究成果を出していきたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 成人マウス低酸素症に対する100%酸素蘇生は脳障害を引き起こす2016

    • 著者名/発表者名
      植木正明, 鷲尾輝明, 外間之貴, 前川信博
    • 学会等名
      日本麻酔科学会第63回学術総会(国内学会)
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
    • 年月日
      2016-05-26

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi