研究課題/領域番号 |
16K10938
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
河本 昌志 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (40127642)
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研究分担者 |
佐伯 昇 広島大学, 病院(医), 講師 (30325170)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 悪性高熱症 / 骨格筋培養 / CICR速度 / ダントロレン / RYR1 / Ca |
研究実績の概要 |
1)初年度に骨格筋の培養はCICR速度亢進症例で行い,培養骨格筋細胞のカルシウム動態の分析を行った.また,凍結ヒト培養骨格筋細胞21症例で,静止時のCa2+濃度を測定し,CICR速度亢進+ resting Ca2+高値(A-H群7例),CICR速度亢進+ resting Ca2+正常(A-N群7例),CICR速度正常+ resting Ca2+正常(N群7例)で検討した.RYR1刺激薬のEC50は(A-H群,A-N群,N群),カフェイン(2.56±0.13,2.92±0.11,5.19±0.35mM),ハロタン(1.43±0.16,1.35±0.18,3.48±0.11mM), 4-CmC(111.4±11.1,134.7±12.8,250.0±16.5 μM)であった.3)SRのCa2+はA-H群が1038±54 で,A-N群1702±179,N群1543±147に比べ低く,Ca2+の貯蔵の減少が示唆された.50μMダントロレンのCa2+低下は,A-H群で最も大きくなった.SRのCa2+枯渇時の細胞外からのCa2+ 流入速度は50μMダントロレンにより, 3群とも抑制された. 2)次年度については,凍結ヒト培養骨格筋細胞9症例(CICR亢進3症例、CICR非亢進6症例)を用いて,温度上昇による静止時のCa濃度の上昇とCaffeine刺激によるCaの上昇に対する影響を検討した.温度上昇に伴う静止時のCa濃度の上昇は認められたが、群間で有意差はなかった.Human Embryonic Kidney (HEK)293細胞を用いた熱耐性の研究では,p.Arg2508Cys変異RYR1遺伝子をHEK293へ導入したMH群(n=30)と,変異がないRYR1遺伝子を導入したWT群(n=55)で比較検討し,35℃から43℃への温度上昇により静止時のCa濃度は両群とも有意に上昇した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) HBSSの潅流温度を28℃から43℃まで上昇では,測定時間が長くなり過ぎ再現性に問題があり,潅流温度を35℃から43℃に変更した. 2) 温度上昇に対するダントロレンのCa2+ 濃度上昇抑制作用については,ダントロレン濃度50μMの条件下で温度上昇を行うと,細胞の反応そのものが極度に低下する. 3) HEK細胞については、温度上昇に対するp.Arg2508Cysと正常者とで差がないためと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
1) Myotubesの温度上昇に関する研究については,対象症例数を増やして検討する予定である. 2) HEK細胞については、温度上昇に対するp.Arg2508Cysと正常者とでは差がなかったが,異なる遺伝子変異についても検討する予定としている. 3) 温度上昇刺激に対するCa動態について,MH素因骨格筋と正常骨格筋細胞で有意差が認められた場合は,ダントロレンやAICARとNACのCa上昇抑制効果を検討する. 4) HEK細胞を使用した実験では,MH+熱中症を併発した症例のRYR1遺伝子変異を作成して,その細胞について温度上昇刺激に対するCa動態を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
設備維持経費に大きい経費が必要となる見込みで、最終年度で経費処理が必要になると予想されるため。
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備考 |
悪性高熱症(MH: malignant hyperthermia)の病因は骨格筋の筋小胞体(SR)のリアノジン受容体(RYR1)や電位依存性Caチャネル(DHPR)の変異によるカルシウム代謝異常で、悪性高熱症の病因や治療法等の詳細については以下のPDFファイルをご参照ください。内容は専門医を対象として記述してあります。
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