脳低温療法による脳保護機構を説明するため、本年度は、温度依存的Neurovascular Unit(NVU)構成細胞由来因子の病態生理学的意義の検討を行った。 1.今までに、末梢血T細胞(CD4+およびCD8+ T細胞)からのパーフォリン産生が、低温(33℃)下で低値、高温(39℃)下で高値となる温度依存性変化を示すことを証明してきており、今回、それがニューロン死へ及ぼす影響を調べた。その結果、パーフォリンは、ニューロン死を濃度依存的に誘導した。 2.今までに、マイクログリアからのTNF-α産生と末梢血T細胞(CD4+、CD8+およびγδT細胞)からのIL-17産生が、低温(33℃)下で低値、高温(39℃)下で高値となる温度依存性変化を示すことを証明してきており、今回、それらの因子が、血液脳関門(BBB)の脳血管内皮細胞同士を結び付けているタイトジャンクション蛋白(Claudin-5、Occludin、ZO-1)のmRNA発現に及ぼす影響を調べた。その結果、TNF-αはClaudin-5、Occludin、ZO-1のmRNA発現を、IL-17はOccludinのmRNA発現を、それぞれ、濃度依存的に低下させた。 以上の結果をまとめると、パーフォリン、およびTNF-αとIL-17の温度依存的産生動態と、パーフォリンによる濃度依存的ニューロン死誘導動態、およびTNF-αとIL-17による濃度依存的タイトジャンクション蛋白mRNA発現低下作用動態は、それぞれ比例関係となった。よって、33℃でのパーフォリン、およびTNF-αとIL-17の産生低下は、それぞれ、ニューロン死抑制、およびBBB機能保護に、一方、39℃でのそれらの産生増加は、それぞれ、ニューロン死増加、およびBBB機能障害に繋がると考えられた。
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