研究課題
小腸粘膜細胞障害のbiomarkerである腸型脂肪酸結合蛋白(Intestinal fatty acid-binding protein:I-FABP)と敗血症性ショック患者の予後および腸管虚血の関連について研究を行なった。人工呼吸管理を要する敗血症性ショックの診断で、当院ICUに入室となった57症例が対象となった。ICU入室時にI-FABPに加え、乳酸、N-terminal pro-BNP、プロカルシトニン、endotoxin activity assay値など予後予測markerの測定も行なった。全体の28日死亡率は23%(13/57)であった。生存群と死亡群の比較では、死亡群で有意にICU入室時の乳酸(p=0.009)、I-FABP(p=0.012)、N-terminal pro-BNP(p=0.039)が高値を示した。これらの因子をAPACHEⅡscoreで調整したロジスティック回帰分析を行なったところ、I-FABPのみが有意に28日死亡と関連を認めた(odds ratio, 1.036; 95% confidence interval, 1.003-1.069; p=0.031)。また、28日死亡を予測するcut off値19.0ng/ml(Youden indexより算出)を基準に、高I-FABP群と低I=FABP群の2群に分けたところ、高I-FABP群で有意に非閉塞性腸管虚血の発症が多かった(2%[1/43] vs 29%[4/14])。以上の解析結果を現在英文誌に投稿中である。サブ解析も今後行なう予定である。
2: おおむね順調に進展している
一部解析結果について、英文誌投稿中であり、サブ解析等の今後の予定についても大きな問題はないと思われる。
我々がこれまでに確立したブタ敗血症モデルおよび測定系(Sekino et al. Anesth Analg 2010)に修正を加え、臨床研究より推定される危険因子の曝露時間や程度を段階別に調整し、小腸粘膜へ与える影響について病理学的評価を行なう。平成28年度は、予備研究から予測される小腸粘膜障害誘発因子、ショック(低血圧)時間およびショックの度合い(平均血圧)について、曝露時間1時間、4時間、8時間、平均血圧40mmHg、50mmHg、60mmHgの3×3=計9パターンに分け標本を作成し、粘膜障害の程度を病理学的に評価しつつ、本研究に適した実験系を確立させる。
動物実験のための費用を計上していたが、予定より支出が少なかったため。
次年度以降にその費用を割り当て、実験計画を着実に遂行する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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