研究課題
糖質コルチコイドはサイトカイン産生およびその機能抑制などの免疫抑制作用をもつことから自己免疫性疾患や感染症の治療、気管支喘息や疼痛治療などに幅広く使用されている。そのため糖質コルチコイド使用患者に全身麻酔を施行する機会は増えているが、周術期にかぎっても糖質コルチコイドのもつ術後悪心嘔吐抑制作用、術後鎮痛作用を期待して術中に糖質コルチコイドを使用する機会が一般化している。しかし、全身麻酔薬そのものにも免疫抑制作用があるため、選択する全身麻酔薬によっては周術期の糖質コルチコイドの免疫抑制程度を増強し癌の再発・転移、感染症を誘発する可能性がある。この問題を解決するためには、糖質コルチコイドによる免疫抑制が全身麻酔薬により増強するか否かについて解析しなければならない。平成29年度の研究では1MACイソフルランおよび1MACセボフルランはともに、臨床使用濃度に近似した10-8モル濃度デキサメサゾンによるマウス胸腺細胞アポトーシス誘導を時間依存性に増強することが示された。『今年度の実験』このデキサメサゾン誘導性胸腺細胞アポトーシスにおける揮発性吸入麻酔薬によるアポトーシス増強作用の機序を解析するために、吸入麻酔薬または静脈麻酔薬によるデキサメサゾン誘導性胸腺細胞アポトーシス増強効果における胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の変化を測定、解析した。『今年度の結果』(1)イソフルラン(1MAC)は4時間および8時間の曝露で胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位低下を有意に誘導したが、その程度はデキサメサゾン(10-8モル濃度)による効果よりも小さかった。(2)イソフルラン(1MAC)およびセボフルラン(1MAC)はともにデキサメサゾンによるミトコンドリア内膜電位低下を増強した。(3)プロポフォール(30μモル濃度)はデキサメサゾンによるミトコンドリア内膜電位低下を増強した。
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Journal of Clinical Monitoring Computing
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