研究課題/領域番号 |
16K10950
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
川崎 知佳 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (60258621)
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研究分担者 |
川崎 貴士 産業医科大学, 医学部, 教授 (60299633)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱射病 / 中枢神経障害 / 臓器障害 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
近年、異常高温環境が人体に影響を及ぼすことが社会問題になっている。熱射病は現在でも非常に高い死亡率を示しているが、病態生理はいまだ不明な点が多い。本研究の目的は、1.異常高体温時に発生する血管内皮細胞障害、中枢神経障害、臓器障害を評価する。2.血管内皮細胞障害、中枢神経障害、臓器障害におけるミトコンドリア機能障害の関与を確認する。3.ミトコンドリア機能維持による熱射病の治療戦略を開発する。 以上について検討し、熱射病における血管内皮細胞障害、中枢神経障害、臓器障害発生へのミトコンドリア機能障害の関与について解明し、それを制御する戦略を開発、熱射病の発生、死亡率の低下を図ることである。 今年度は、熱射病モデルを用いて、熱曝露後、血液・臓器採取を行い、以下の研究を行った。研究1:熱曝露により発生する血管内皮細胞障害の評価:血管内皮細胞障害を評価するため、血中protein C、thrombin-antithrombin complex(TAT)、tissue factor(TF)濃度をELISAで測定した。研究2:熱曝露により発生する中枢神経(視床下部)障害の評価:中枢神経障害を評価するため、脳虚血・低酸素マーカーであるglutamate, lactate-to-pyruvate ratio, nitrite, dihydroxybenzoic acidの視床下部内濃度を測定した。また、神経障害マーカーであるglycerol濃度を測定した。研究3:熱曝露により発生する臓器障害の評価:肝障害の評価のため血漿AST、ALT濃度を測定した。また、肝でのHMGB1発現を評価するため免疫染色を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熱曝露により発生する中枢神経(視床下部)障害の評価において、ホルマリン固定した脳標本での神経障害の程度をPulsinelliらの方法(Ann Neurol 11: 491-8, 1982)を用いたスコアリングする予定が進んでいない。また、炎症メディエーターであるHMGB1, IL-1beta, IL-6, TNF-alphaの中枢神経内濃度をELISAで測定する予定が遅れている。さらにvasopressin濃度変化検討も行う予定であったが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究4として、研究1-3それぞれの障害とミトコンドリア機能障害発生の関連評価を行う。研究1-3それぞれの障害とミトコンドリア機能障害の程度を比較検討するため、ミトコンドリア機能として1.ミトコンドリア細胞膜電位測定;DiOC63により染色後、フローサイトメーターにて測定(Chen:Annu Rev Cell Biol 1988)2.細胞内ATP濃度測定;bioluminescence assay; Molecular Probes ATP Determination Kit 3.蛍光染色による評価(Fossatiら: J Immunol 2003);Mito Tracker Red CMXRos(Molecular Probes製);細胞膜電位の活性化を評価、JC-1(Molecular Probes製);膜電位の高低を評価、DHR-123(Molecular Probes製);H2O2産生を評価 4.ミトコンドリア形態評価;Mito Tracker GreenFMを用いhistochemical stainingを行いconfocal microscopyで観察 5.Mitochondrial complex Ⅲ activity; MitoToxOXPHOS Complex Ⅲ Activity Kit(Abcam製) を血管内皮細胞、microglia、肝細胞で行う。また6.血中ATP濃度測定 を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
炎症メディエーターであるHMGB1, IL-1beta, IL-6, TNF-alpha, vasopressinの中枢神経内濃度を測定する予定が遅れており、測定キットの購入が進んでいない。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプリングを進め測定キットによる測定、解析を進める予定である。
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