研究実績の概要 |
平成28年度のラットの異食実験を基盤に,平成29年度は嘔吐するモデル動物スンクス (Suncus murinus, Her系,メス)を用いて術後悪心嘔吐(PONV)モデルを開発した.イソフルラン麻酔下に下腹部正中切開と縫合を行い,麻酔から覚醒させ,30分間チャンバー内で観察したところ,retchingやvomitingを惹起させることに成功した.対照としてナイーブ群,イソフルラン麻酔のみの偽手術群を設定した.PONVモデルと偽手術群はナイーブ群に比べて嘔吐行動が増加した.さらにわれわれはPONVを起こしたスンクスの嘔吐中枢である脳幹の孤束核から全量RNAを抽出して,次世代DNAシークエンサによるRNA-seqを実施した.各群3つのreplicateとして全量RNAを50ngをインプットした.1サンプルあたり2X100bpリードを40,000,000本シークエンスした.スンクスには参照ゲノムがないので,デノボ・アセンブリを行うことにして,東北大学東北メディカルメガバンクのスーパーコンピュータを用いてTrinityソフトウエアでコンティグを作成した.404,438個のコンティグが作成できた.N50は1,085であった(N20は3038,N80は296であった).現在,TrionateソフトウエアでPONV発症時に発現変化する遺伝子の群間差を検討しているところである.またスンクスのゲノムのドラフト配列を国内の研究者から譲渡する予定である.本研究の現在までのデータは平成30年秋の北米神経科学会(カルフォルニア州サンディエゴ市)で発表し,学会参加者からの批評を受け議論する予定である.
|