新生児の周術期では血小板機能の未熟性がしばしば問題となる。新生児血小板の止血機能の未熟性については最近の精力的な研究により、多くの重要な知見が集積されてきた。血小板は血栓止血能だけでなく、免疫系とのクロストークを通じて多彩な生体防御機能を有していることが明らかとなってきている。敗血症では、血小板と自然免疫系のクロストークにより、全身性の炎症反応と血栓症が互いに増幅しあいながら、重要臓器の微小血管レベルでの循環不全をまねき多臓器不全に陥る。敗血症における血栓症は、凝固カスケード亢進によって形成されるフィブリン塊だけでなく、局所に凝集した血小板によるさらなる凝固カスケード亢進により悪化していくと考えられている。敗血症が重症化するほど血小板数低下を示し、血小板数低下は死亡リスク因子の一つとして広く認められている。敗血症マウスモデルでは、血栓症と血小板減少症は血小板GPIbを介してひきおこされる。新生児では敗血症時の致死率は成人と比較して低い(10-15%)が、血小板の止血機能、免疫調節機能、組織修復機能などに新生児に特異的な変化があるのか、その詳細は明らかでない。免疫系が完全には発達していない新生児では、血小板の生体防御機能が周術期感染症や炎症反応の制御に貢献し、敗血症の病態を左右する要因であると考えられるが、ほとんど研究が進んでいない。そこで、まず、第一段階として新生児と成人血小板のタンパク質発現相対定量解析(iTRAQ解析)を行い、タンパク発現プロフィールを網羅的に比較検討するために、iTRAQ解析実験系を確立した。
|