本研究は、動脈圧の脈圧振幅の呼吸性変動(pulse pressure variation:PPV)と 中心静脈圧(central venous pressure:CVP)を上腕血圧測定用のカフのカフ圧脈波を用いて無侵襲で低コストに測定する手法の開発を目的とする。本研究ではこの手法で測定するPPVの代替パラメーターをezPPV、CVPの代替パラメーターをezAVPとしている。 平成28年度では、まず、上腕血圧測定用カフの加圧アルゴリズムの検討を行った。考案したアルゴリズムでは、まず一定時間ezPPV測定のために一定圧力で加圧を行った状態を維持し、その期間にPPVに相当するカフ圧力脈波の呼吸性変動を計測する。続いて、数秒の間隔でカフ圧力をステップダウンさせていき、各ステップでのカフ圧力脈波を測定する。 平成28年度までには、この加圧パターンで10症例の測定を行い、約250回分の測定データを取得した。ezPPVに関しては実測した動脈血圧波形から得たPPVとの間にR=0.65での有意な相関を確認した。ezAVPに関しては実測した中心静脈圧との間にR=0.735での有意な相関を確認した。平成29年度に妥当性検証研究を10例で行った。結果として、臨床的に許容範囲といえる範囲の再現性が確認できた。 平成30年度には、平成29年度の妥当性検証研究の結果と平成28年度の測定結果を比較し、改めて以前のデータの処理方法を工夫し、再現性を向上させた。 平成28年度から平成30年度までの一連の研究により、ezPPVおよびezCVPが再現性をもって非侵襲的かつ低コストな周術期の輸液過剰・過少の評価指標となりうることを証明した。
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