本研究では、酸化ストレスおよびアポトーシスによって用量依存性に心筋障害を発症するドキソルビシン(DOX)誘導性心不全モデルを用いて、チオ硫酸が心筋保護効果を発揮するのか、その作用メカニズムを生体及び分子レベルで解明することを目標とした。マウスを用いたDOX誘導性心不全モデルを確立することに成功し、以下の事項を明らかにすることができた: ①DOX誘導性心不全モデルの妥当性を、DOXによる心筋障害が生じることをマウス心エコーで評価することで確認した。②DOX投与後にチオ硫酸ナトリウム(STS)を投与することで、心収縮能低下が抑制されることが明らかになった。③DOX投与後にSTSを投与することで、6日後のマウスの生存率が改善することを示した(10% vs. 50%,p<0.05)。④DOX投与によって生じる心臓関連生化学検査値(クレアチニンキナーゼ、乳酸脱水素酵素)の悪化が、STS投与によって改善することを示した。⑤DOX投与によって生じる酸化ストレスを、STS投与することによって抑制されることを示した。⑥DOX投与によって心筋細胞に誘導されるアポトーシスを、STS投与することによって抑制されることを示した。 以上より、DOX誘導性心不全モデルにおいてSTS投与が心不全抑制効果を示すこと、またその機序としてSTSによる酸化ストレスの抑制効果およびアポトーシス抑制効果が関与することが示唆された。 これらの知見を、国際学会にて発表することができ、現在論文投稿準備中である。
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