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2017 年度 実施状況報告書

術後痛に対する全身麻酔薬およびTRPチャネルの関与の検討

研究課題

研究課題/領域番号 16K10964
研究機関九州大学

研究代表者

辛島 裕士  九州大学, 大学病院, その他 (80380434)

研究分担者 塩川 浩輝  九州大学, 大学病院, 助教 (30572490)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードTRPA1 / イソフルラン
研究実績の概要

一次求心性侵害受容線維終末に発現が多くみられるTRPA1は、痛みに関係するチャネルとして研究が進んでいる。TRPA1は、多様な外因性の刺激物質によって活性化されて急性痛をおこすだけでなく、炎症に関与する内因性物質によっても活性化される。さらに炎症時には発現量の増加や、細胞表面への移動が見られることより、TRPA1は炎症性疼痛にも大きく関与する可能性が考えられている。つまりTRPA1は手術侵襲に対する侵害受容性疼痛を主体とする術後急性痛のみならず、神経傷害性疼痛を主体とする慢性痛のいずれにも関与する可能性がある。そこで、本研究では全身麻酔薬の術後痛への影響をTRPA1に対する作用という観点から検討することを目的としている。
TRPA1研究には一つの大きな問題点がある。物質に対する反応性が齧歯類とヒトで異なるものがあり、ヒトに齧歯類で得られた結果を当てはめることができないということである。そこでまず、吸入麻酔薬に対するTRPA1の反応性が齧歯類とヒトで違いがないかを確認するために、HEK293細胞へmouse TRPA1もしくはhumanTRPA1を一過性発現させたモデルを用いて検討を行った。するとイソフルランは、mouse TRPA1では低濃度ではチャネル活性、高濃度ではチャネル抑制という二峰性の反応を示したのに対し、human TRPA1では濃度依存性のチャネル活性を示し、齧歯類とヒトでは異なることが明らかになった。これはプロポフォールでも観察された種の違いによる反応性の違いである。本研究はあくまでヒトに応用できるものを目指しており、残念ながらイソフルラン、プロポフォールとも研究目的に添えるものが行えないことが判明した。なお、もうひとつ研究対象としていた吸入麻酔薬セボフルランに関してはTRPA1に対する反応は非常に小さいため、生体に与える影響は小さいと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上記のように、今回研究対象とした吸入麻酔薬イソフルランと静脈麻酔薬プロポフォールのいずれの物質もTRPA1に対する反応性が齧歯類とヒトでは異なることが判明した。本研究の目的はあくまでヒトを対象とした麻酔薬のTRPA1に対する影響を考えた研究デザインであるため、今後このまま続けても得られた結果はあくまで齧歯類のものであるということにしかなり得ない。そこで、研究方針を変更している。

今後の研究の推進方策

上記の理由により、本研究に関しては頓挫していることろである。そこで以下のように方針を変換して研究を継続することとしている。
1.イソフルラン、プロポフォール以外の周術期に使用する薬剤がTRPA1に与える影響の検討を行う。具体的には鎮静薬(デクスメデトミジン)、麻薬(フェンタニル、レミフェンタニル)、筋弛緩薬(ロクロニウム、スキサメトニウム)である。
2.次に、1.の結果が思わしくない場合は、TRPA1と同じく痛みに関係し、炎症にも関与していると報告されているチャネルにTRPV1を研究対象として検討する。TRPV1は唐辛子の主成分であるカプサイシンや熱、酸に反応するチャネルであり、現在TRPチャネルの中では最も研究が進んでいるチャネルである。そこで、まずは同様の研究がTRPV1に関して行われていないかを論文検索中である。そして、問題ないのであれば、次はTRPA1の影響が加わらないようなモデルを考えた上で研究を進めることを検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 炎症性疼痛とTRPA12017

    • 著者名/発表者名
      辛島 裕士
    • 雑誌名

      日本ペインクリニック学会誌

      巻: 24(4) ページ: 308-317

    • DOI

      https://doi.org/10.11321/jjspc.17-0008

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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