麻酔したブタ生体を用いて、気管切開を行い人工呼吸器を装着し、胸骨を切開し心臓を露出し、頚動脈ー左前下行枝バイパスを作成した。このバイパス回路を12分間遮断し90分間解除し左前下行枝灌流領域を虚血及び再灌流させることで、心筋虚血再灌流モデル(スタン心筋モデル)を作成した。虚血再灌流部位に一対の超音波クリスタルを植え込み局所心筋短縮率(%SS)測定し、心筋収縮力の指標とした。このモデルを用いて、GLP-1 agonistリラグルチドが心筋虚血再灌流障害からの回復に与える影響について検討した。 1.GLP-1 agonistリラグルチドを心筋の虚血前投与または虚血再灌流直後に静脈投与することによって心筋スタニングからの心筋収縮力の回復を改善することが証明された。 2.GLP-1 agonistリラグルチドの前日投与が心筋スタニングからの心筋収縮力の回復を改善することを証明したが、その心筋収縮力の回復効果はグリベンクラミドの投与により減弱することを認めた。 GLP-1 agonistリラグルチドの前日投与による回復効果は、KATPチャネル阻害作用を持つグリベンクラミドにより阻害されることから、GLP-1 agonistリラグルチドの前日投与は心筋 KATPチャネルを介したプレコンディショニング効果である可能性が示唆された。GLP-1 agonistリラグルチドの心筋の虚血前投与または虚血再灌流直後の静脈投与による心筋スタニングからの心筋収縮力の回復を改善効果に関しても血圧上昇や左室内圧上昇速度の増強が現れる前から心筋収縮力の回復を認めるため、陽性変力作用増強作用によるものではなく薬理学的プレ・ポストコンディショニング作用が関与していると推測された。
|