研究実績の概要 |
喫煙が気管支肺胞系のみならず免疫系の機能障害を及ぼす分子機構を,肺の酸素代謝と関連づけて生体の酸素代謝調節のマスター転写因子として機能している低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor 1, HIF-1)の活性化状態解析を基軸とした検討により明らかにすることが本申請の目的である。 研究初年度から継続して、肺胞、気道上皮由来の樹立細胞株を用いてたばこ煙抽出液に暴露してHIF-1の活性化またHIF-1にその発現調節が担われているとされていて且つ気道のリモデリング関連のvascular endothelial growth factor (VEGF), Matrix metalloproteinases (MMPs), DNA damage response 1 (REDD1)などの蛋白質の遺伝子発現を半定量的RT-PCRを用いて調べた。この成果は初年度に論文として公刊(Cigarette smoke reversibly activates hypoxia-inducible factor 1 in a reactive oxygen species-dependent manner. Sci Rep 2016, 6:34424.)した。今年度はさらに次世代シーケンサを用いたRNA-Seq法を持ちいてたばこ煙抽出液に対する遺伝子応答を網羅的に検討する研究に着手した。 さらにマウス喫煙モデルを用いてHIF-1の活性化、遺伝子発現を検討した。たばこ煙抽出液はVEGF, MMP, REDD1などのmRNA発現をHIF-1依存的に4時間をピークとして亢進すること、この反応が細胞内活性酸素の増加に依存していること,さらにマウス喫煙モデルを用いた検討により、喫煙が肺胞、気道上皮においてHIF-1a蛋白質の発現誘導とVEGF, MMP, REDD1などのmRNA発現の亢進をもたらす事が示された。 さらに肺胞バリアの形成に関連のあるタイトジャンクション関連の遺伝子発現を次世代シーケンサを用いたRNA-Seq法を援用しての検討を開始した。 一方、免疫機能へ与える影響についての評価については着手できなかった。
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