研究実績の概要 |
平成28年度から平成29年度にかけてラット腎虚血再灌流 (I-R) 傷害モデルを用い、miRNAs発現変動の網羅的解析を行い、関与するmiRNA分子種およびその標的遺伝子の同定を試みた。Wistar系雄性ラットをpentobarbital (40 mg/kg, i.p.) 麻酔下、気管切開、人工呼吸 (一回換気量8 mL/kg、70回/min) を行いvecuronium (1 mg/kg/hr, i.v.) にて不動化させ、動脈血圧および動脈血液ガスのモニタリング下、腎動静脈をクランプすることにより両腎を同時に30分間虚血 (I) 状態にした。その後クランプを解放して血流を確認し、両腎を60分間再灌流 (R) して腎I-R傷害モデルを作製した。R終了後に両腎を摘出し、total RNAおよびタンパク質サンプルを調製した。Sham群をコントロールとしてWestern blot解析を行ったところ、I-R群の腎組織においてLCN2発現の有意な増加が認められ、I-Rによる腎障害が引き起こされている可能性が示唆された。次にmiRNAマイクロアレイ解析を行ったところ、I-R群で30種類以上のmiRNAsに2倍以上の発現増加あるいは減少が認められた。リアルタイムRT-PCR法を用いて検討を行ったところI-R群でmiR-122-5pの有意な発現増加が確認でき、TarBase等のデータベース検索よりそのターゲットとしてSLC7A1が推測された。実際に、I-R群の腎組織においてSLC7A1タンパク質発現の有意な低下が認められた。したがって、miR-122-5pを介するSLC7A1の機能障害が腎I-R傷害に関与している可能性が示唆された。これらの解析でよりよい結果を得るためには全ての検体を同時に解析する事が重要であること、またこの解析結果を精査して学術的な結論に導くにも十分な時間を要することが考えられたため平成29年度までにマイクロアレイ解析等のomics 解析を先行して施行した。平成30年度はomics解析から得られた結果を精査しながら確認実験を行い、最終的な考察を行った。現在は論文投稿を準備している。
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