研究課題
2018年までに、Sprague-Dawley雄性ラット6週齢に心筋梗塞を作成し、1週間後にEFが30%以下になっていることを確認した。9週齢からSedentary(非運動)群とExercise群にわけた。Sedentary群は通常の飼育ケージで、Exercise群は、自由運動のできる回転カゴ付きケージで6週間飼育した。その後、各群をさらにSurgery群とNon-Surgery群にわけた。Surgery群は、16週齢で、全身麻酔下に開腹手術を施行した。2cmの腹部正中切開で小腸を10cm取り出し、指で3分間小腸をもみほぐし、盲腸部に21Gで径1mmの穿孔を1カ所おこす操作を加え、15分ごとに4回腸管を腹腔から出し入れし1時間後で閉腹した。手術24時間後に、心エコーおよび心カテーテルによる心機能評価を行った。Exercise+Surgery群、Sedentary+Surgery群において、心エコーにおけるEF、E/A、心カテーテル検査におけるLVEDPの差異は確認できなかった。炎症の抑制は、運動療法の多面的効果pleiotropic effectsのなかのひとつでしかない。運動療法による炎症の制御により心機能が改善するという概論自体は独創的であるが、functional、hemodynamicなマクロな心機能の指標を示すことは困難であった。既報においても、運動療法は、中枢である左室機能への劇的な効果に関しては明確でなく、主に多く報告されているのは骨格筋筋力や末梢血管抵抗に与える末梢効果についてである。その後の研究において、運動療法による術後の心機能改善効果を明らかにすることはできなかった。モデルラットあるいは手術侵襲モデルが適切でなかった可能性がある。