研究実績の概要 |
同種血輸血は周術期患者の生命予後を悪化させると報告されており,血液製剤に含まれる白血球の関与が指摘されている.一方,周術期に使用される自己血液製剤に混入している白血球の有害作用について詳細な検討はなされていない.本研究は「顆粒球や単球・マクロファージなどによる自然免疫を介する炎症性病態が輸血に起因する有害反応を惹起する」との仮説を検証することを目的として立案された. 最終年度には,同種血輸血用に販売されている,採血時白血球除去が施行された赤血球濃厚液の血漿中に含まれるサイトカインと貯血式自己全血製剤中の血漿サイトカインの濃度を比較した.フローサイトメトリーを利用した網羅的イムノアッセイにより急性期ヒトサイトカイン27項目の血漿中濃度を同時に測定した(Bio-Rad Bio-Plex #m500kcaf0y)ところ,両者とも測定可能であった13項目中IFN-γを除く全てのサイトカイン濃度が自己全血で有意に高かった.急性炎症性サイトカインであるTNF-αのほか複数の白血球走化因子(MCP-1, MIP-1α, MIP-1β, IP-10, RANTES, Eotaxin)や成長因子(FGF, PDGF-BB),喘息等アレルギー疾患との関連が指摘されているTh2サイトカインのうちIL-4と-9がそこに含まれていた. 白血球の冷蔵保存は自身のアポトーシスを誘導することが知られており,このような刺激が白血球除去製剤と比較した自己全血製剤の血漿中サイトカイン濃度増加の原因であると考えられる.われわれはさらに,ヒト単球系セルライン(THP-1)を利用して,単球アポトーシス様変化が冷蔵保存(4℃)のみならず室温保存(25℃)でも発生し,血栓発生の要因となることが知られている単球由来微小小胞が発生することを報告した.
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