研究課題/領域番号 |
16K10987
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
南 敏明 大阪医科大学, 医学部, 教授 (00257841)
|
研究分担者 |
藤原 淳 大阪医科大学, 医学部, 助教 (00773516)
森本 賢治 大阪医科大学, 医学部, 助手 (20388250) [辞退]
上野 健史 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70782283) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 神経障害性疼痛 / アロディニア / アクロメリン酸 / MMP / アストロサイト / ミクログリア |
研究実績の概要 |
毒茸のドクササコ (Clitocybe acromelalga) の成分であるアクロメリン酸Aを、マウス脊髄腔内に投与し触覚刺激を加えると非常に強いアロディニアが出現すること、さらに、1日に1回、1週間触覚刺激を加えることで遷延性アロディニアモデルを作製できることを確立した。今まで、アクロメリン酸Aによるアロディニアを指標として、数百のアクロメリン酸A誘導体の中からGIF-2034を、神経障害性疼痛治療薬の候補薬として選定した。GIF-2034は、単独では高用量でも低用量でも痙攣やアロディニアを惹起せず、アクロメリン酸Aと同時投与では低用量でアロディニアを抑制する (昨年度の報告)。 Balb/Cマウスの右脛骨骨髄内に4T-1マウス悪性乳腺細胞を接種し、マウスがん性疼痛モデル (骨転移モデル) を作製し、GIF-2034をマウス脊髄腔内に投与して効果を検討した。行動評価はBioseb社の体重負荷試験装置を使用し、処置側・非処置側の下肢にかかる重量と接地面積を測定した。GIF-2034は、マウスがん性疼痛モデルの痛みの閾値を軽減した。 さらに、マウスがん性疼痛モデル (骨転移モデル) を用いてがん性疼痛の発現機構を、MMPに着目しMMP阻害薬の効果を行動、腫瘍、脊髄の分子解析で評価した。MMP-9阻害薬の腹腔内、髄腔内投与は、腫瘍細胞接種処置側下肢の負荷比が改善した。リアルタイムPCRでは、処置側の脊髄後角でMMP-9が有意に増加した。脊髄免疫染色では、処置側の脊髄後角でMMP-9陽性の細胞数が増加した。すなわち、がん性疼痛モデルにおいて、脊髄内のMMP-9が上昇し、MMP-9阻害薬投与で疼痛軽減を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスがん性疼痛モデル (骨転移モデル) とMMPとの興味深い結果、すなわち、がん性疼痛モデルにおいて、脊髄内のMMP-9が上昇し、MMP-9阻害薬投与で疼痛軽減を認めたことから、MMPに関する研究を優先させた。 本来のアクロメリン酸A誘導体GIF-2034を用いて、中枢性神経障害性痛である脊髄損傷モデル、末梢性神経障害性痛であるL5SNTモデルだけでなく、がん性疼痛モデルに対する有効性を検討する予定であったが、現時点では、がん性疼痛モデルに対する効果しか検討できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、がん性疼痛モデルを用いて、新たな痛みの発現機構が明らかになりつつあるため、それを遂行すること、アストロサイトとミクログリアのグリア細胞、MMPとGIF-2034の関係を解析する予定である。 がん性疼痛、神経障害性疼痛治療の新たなターゲットをさらに解明すること、アクロメリン酸A誘導体GIF-2034、MMPとの関連を検討するために、次年度の助成金と合わせて、研究分担者を増やして、精力的に実験を遂行する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウスがん性疼痛モデル (骨転移モデル) とMMPとの興味深い結果、すなわち、がん性疼痛モデルにおいて、脊髄内のMMP-9が上昇し、MMP-9阻害薬投与で疼痛軽減を認めたことから、MMPに関する研究を優先させた。 それらの実験を優先させたため実験動物数、実験試薬、材料が当初の計画とは異なり、次年度に繰り越しとなった。 次年度は、本来のアクロメリン酸A誘導体GIF-2034を用いて、中枢性神経障害性痛である脊髄損傷モデル、末梢性神経障害性痛であるL5SNTモデルに対する効果の検討と、がん性疼痛モデルを用いて、新たな痛みの発現機構を明らかにすること、アストロサイトとミクログリアのグリア細胞、MMPとGIF-2034の関係を解析する予定である。
|