研究実績の概要 |
本研究は、脳卒中後疼痛 (central post-stroke pain: CPSP) の発現に対する脊髄の high mobility group box-1 (HMGB1)/HMGB1 関連受容体/グリア細胞/NOS シグナルの関与について検討した。CPSPモデルマウスは 30 分の両側総頸動脈閉塞法 (BCAO) によって作成した。機械的刺激に対する逃避行動回数の変化はvon Frey 試験を行った。BCAO 3 日後に抗 HMGB1 抗体 (2, 20 μg)、L-NAME (NOS 阻害剤; 100, 300 μg)、 LPS-RS (toll-like receptor 4 (TLR4) アンタゴニスト; 5, 10 μg)) および LMWH (receptor for advanced end products (RAGE) アンタゴニスト; 20, 40, 70 μg)) を脊髄腔内投与した。グリア細胞の活性化および nitric oxide synthetase (NOS) 活性はそれぞれ免疫染色法および比色定量法により測定した。BCAO 3 日後における有意な逃避行動回数の増加は、抗 HMGB1 抗体、L-NAME 、LPS-RSおよび LMWH の投与によって有意に抑制された。さらに、BCAO 後に脊髄グリア細胞の活性化および NOS 活性の上昇が確認され、それらは抗 HMGB1 抗体 および LPS-RS を投与することによって、有意に抑制された。一方、LMWH の投与はグリア細胞の活性化に影響せず、NOS 活性を有意に抑制した。CPSP の発現機序に、脊髄の HMGB1/TLR4/グリア細胞/NOS および HMGB1/RAGE/NOS シグナルの変動が関与している可能性が考えられた。
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