研究課題
2016-2017年にかけて外来に新患で受診される70歳以上の高齢者を中心に、約800人の患者においてGeriatric 8 screening toolを使用した健康状態の調査を行った。前立腺癌については、中央値が14.5点と他疾患と比較すると点数が高い傾向にあった。一般的にG8のcut-offとされる14点以下と14点以上の2群に分けてその後の治療法の選択に違いがあるか検討を行ったが、手術や放射線、ホルモン療法などの治療の割合に有意な差を認めなかった。大学病院へ治療を目的に紹介される患者という、すでにバイアスのかかった集団であることは考慮する必要があるが、少なくとも限局性の前立腺癌については、G8による評価をそのまま使用するには多くの課題があることがわかった。一方で膀胱癌については前立腺癌患者と比較して平均年齢で5歳高齢で、合併症を多くもつ傾向にあった。G8の点数も中央値で12点と明らかに低い結果であった。実際の臨床でも膀胱癌の高齢者の方が治療を検討する上で苦慮することが多く、G8による健康状態の評価が治療法を考える際のひとつの指標になる可能性があると考えられた。今回の検討では膀胱癌でも、早期癌から進行癌、あるいは治療も内視鏡的手術から膀胱全摘、化学療法などさまざまな程度の侵襲を伴う治療を行う患者を含めたため、具体的にG8の評価と治療選択や治療成績、合併症、予後などを検討することはできなかったが、今後高齢者の膀胱癌に対象を絞って検討することにより、さらに高齢者における健康状態評価の意義を明らかにすることができる可能性があるものと考えられた。
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臨床雑誌 内科(南江堂)
巻: 121 ページ: 897-900