研究課題
前治療無し(NNA)、内分泌療法(NHT)、化学内分泌療法(CHT)の前治療の異なる3群の前立腺全摘組織210コア、70例のtissue microarrayを作成した。免疫組織学的染色を用いて、AR、GR、PR、ERαの発現を比較した。ARおよびGRは主に癌上皮に発現し、PRおよびERαは前立腺間質にも強く発現した。ARは術前治療により発現が低下し、GRは術前治療により亢進しCHT群では他2群に比べて有意に高値であった。また間質のPR発現がCHT群で有意に上昇した。CHT群の生化学的再発とステロイド受容体発現の関連を解析したところ、癌上皮核内AR高発現は生化学的再発に関連する傾向があり、間質細胞のPR発現低値は有意に生化学的再発と関連した。In vitroでは去勢抵抗性前立腺癌細胞株である22Rv1細胞を低容量からドセタキセル含有培養液で継続的に培養をつづけることによりドセタキセル耐性22Rv1細胞の作成を試みた。最終的にドセタキセルのIC50が7.9nmolの22Rv1-DR細胞が作成され、MDR-1発現高値、ドセタキセル治療72後にCleaved PARPは発現せず、抗癌剤耐性であることが確認できた。この細胞株を用いて全細胞、核・細胞質分画でステロイド受容体発現を検討したが、両細胞間で発現差がなかった。上記の検討より前立腺癌間質におけるPR発現が癌増悪に重要な役割を果たす可能性を見出した。これに関しては前立腺間質細胞株と癌細胞を共培養するモデルでPRの関連を検討している。また22Rv1-DRを用いた研究ではステロイド受容体に特記すべき変化を認めなかったがHippo関連タンパク発現に変化を認めたため解析を進めている。本年度上述する新しい知見を得ることができ、研究は概ね順調に進んでいる。
2: おおむね順調に進展している
仮説として注目したステロイド受容体の中で、プロゲステロン受容体の前立腺組織間質発現が重要である可能性を本年度の研究で見出した。対象受容体が絞り込めた点で研究の第一目標が達成されたと考えている。また、in vitroでは予想に反した結果であったが、付随しておこなった検討により前立腺癌内分泌抗癌剤耐性に関与する可能性のある新規経路が見出されたためこの点も研究の進展に重要な所見であったと考えている。
上記所見をもとに今後はin vitroでは前立腺間質細胞株と癌細胞株の共培養系を用いて、これまで得られた所見のvalidationと詳細な機序解明をめざす。また本年度以降はin vivoでPRやHippo経路の前立腺癌内分泌化学療法耐性への関連も検討できればと考えている。またin vitroでみいだしたHippo経路関連タンパク発現のヒト組織における関連も検討したいと考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
PLoS One.
巻: 12 ページ: e0171615
10.1371/journal.pone.0171615.
Carcinogenesis
巻: 37 ページ: 1129-1137
10.1093/carcin/bgw108
http://www.med.akita-u.ac.jp/~hinyoki/