ERK5はVHLにより分解誘導されることが報告されている。淡明細胞型腎癌のほとんどはVHLの不活化が起こっており、淡明細胞型腎癌ではERK5が蓄積していることが予想される。我々は腎癌におけるERK5の発現の検討と、治療標的としての可能性について研究を行った。 腎癌において、ERK5の発現を確認したところ、約3/4の症例で発現を認めた。中でも強発現症例において予後が悪かった。 腎癌細胞株においてERK5の発現を確認したところ、VHL異常を認める株ではERK5の発現が高かったが、その中でも発現の差を認めた。ERK5の発現を抑制する役割が知られているmiR143の発現とERK5の発現の関連を見たところ、ERK5の発現とmiR143の発現は逆相関していた。これは臨床検体においても確認できた。調べた細胞株の中で最もERK5の発現が高かったヒト腎癌細胞株A498を以後の研究に用いた。 ERK5をsiRNA法によりノックダウンしたところ、抗アポトーシス作用のあるBCL2などの発現が低下した。ERK5特異的阻害剤を添加したところBCL2発現低下、アポトーシス誘導が見られた。 腎癌細胞株A498皮下移植ヌードマウスモデルを用いてERK5阻害剤を投与したところ、腫瘍はコントロール群と比較し増殖抑制が見られた。また投与マウスと非投与マウスで体重の差は認めなかった。ERK5阻害剤投与マウスの腫瘍は増殖抑制、アポトーシス誘導が見られただけでなく、血管に乏しく、腫瘍に対する直接効果だけでなく、抗血管作用も示すことが示唆された。
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