研究課題/領域番号 |
16K10997
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
齋藤 一隆 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (10422495)
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研究分担者 |
北野 滋久 国立研究開発法人国立がん研究センター, 早期・探索臨床研究センター, 医員 (60402682)
藤井 靖久 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70282754)
吉田 宗一郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80383280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / C反応性蛋白 / 腫瘍促進性炎症 / 免疫抑制 / 微小環境 |
研究実績の概要 |
腎細胞癌での免疫抑制状態と全身性炎症反応との関連を解明し、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)が抗腫瘍免疫の指標となるバイオマーカーとなりうることを示すため、以下の研究を行った。 前治療を行わずに手術療法を行った腎細胞癌111例の切除標本を用いて、免疫組織染色にて腫瘍へのCD4+/8+T細胞、CD163+細胞(M2マクロファージ)、Foxp3+細胞(制御性T細胞)の浸潤を評価し、これらの細胞浸潤と術前血清CRP値との関連、および予後への影響を調べた。 この結果、CD163+細胞、Foxp3+細胞、CD8+細胞浸潤と術前CRP値との間に正の相関が認められた。すなわち、これらの細胞浸潤が多い例の術前CRP値は、そうでない例と比較し、有意に高値であった。癌特異的生存は、CD163+細胞、Foxp3+細胞、CD8+細胞浸潤を多く認めている例の癌特異的生存はそうでない例と比べ有意に不良であった。 M2マクロファージ、制御性T細胞はともに癌微小環境で抗腫瘍免疫に抑制性に作用するとされており、これらの細胞浸潤を多く認める場合には、抗腫瘍免疫が抑制的になっていると考えられる。本研究で、腎細胞癌において癌微小環境への免疫抑制性細胞浸潤は、癌特異的生存と負の相関を示し、多く浸潤している例の生命予後が有意に不良であることが示された。さらに、免疫抑制性細胞浸潤が炎症マーカーであるCRPと正の相関を示し、CRPの上昇に見られる慢性炎症と微小環境での免疫抑制状態が相関し、CRPが抗腫瘍免疫状態の指標となるバイオマーカーとなりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、初年度の研究予定として腎細胞癌摘出標本内の微小環境免疫状態と全身炎症反応との関連解析を行うことを主目標としていた。先に述べたように、当該項目については、ほぼ実験が終了し、この成果は、2017年の米国泌尿器科学会での演題に採択され、同学会にて報告予定である。さらに学術誌への投稿を準備中である。 また、腎細胞癌患者の全身血中免疫状態と全身炎症反応との関連解析については、実験の具体的なプロトコールを作成し、実験の準備を行った。 腎細胞癌における免疫抑制/全身炎症反応誘導モデルの作成と機序解明においては、細胞培養実験を開始し、培養条件等の確認を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、引き続き、腎細胞癌における微小環境免疫状態と全身炎症反応との関連、及びその機序を解明することを目的に研究を進める。 術前薬物療法後に腎摘除が行われた摘出標本で免疫抑制性細胞浸潤と、薬物療法中のCRP値との関連を調べ、治療による炎症反応の推移と微小環境での免疫状態との関連を調べる。 腎細胞癌患者の全身血中免疫状態と全身炎症反応との関連解析については、本年度中に開始する予定である。すでに実験を開始する環境は整っており、治療前後(薬物療法または手術)での、CRPと全身血中免疫状態の変化および治療効果との関連を調べる。 腎細胞癌における免疫抑制/全身炎症反応誘導モデルの作成と機序を解明するために、細胞培養実験を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、腎細胞癌患者の全身血中免疫状態と全身炎症反応との関連解析、および、腎細胞癌株における免疫抑制/全身炎症反応誘導モデルの作成と機序解明においては、それぞれプロトコール作成、および培養実験の段階で、当該年度の支出額が所要額に達せず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度で、腎細胞癌患者の全身血中免疫状態と全身炎症反応との関連解析、および、腎細胞癌株における免疫抑制/全身炎症反応誘導モデルの作成と機序解明の実験に必要な関連試薬の購入に助成金を使用することを計画している。
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