研究課題
腎細胞癌での免疫抑制状態と全身性炎症反応との関連を解明し、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)が抗腫瘍免疫の指標となるバイオマーカーとなりうることを示すため、以下の研究を行った。腎細胞癌の分子標的療法で、治療後早期のCRP値の推移がその後の予後と相関することを見出した。治療開始時にCRPの上昇を認めない例の予後が良好であることが知られているが、さらに治療開始時高値例のなかでも、治療後早期にCRP値の低下を認めた例の予後が比較的良好であり、CRPの低下が良好な経過の指標となり、進行腎細胞癌に対する分子標的療法において、CRPが治療効果を反映するバイオマーカーとなることを国際学術誌に報告した。この背景として、CRP値の上昇としてみられる全身性炎症反応の亢進が、免疫抑制性の微小環境を反映することを示した。腎細胞癌へのCD163+細胞(M2マクロファージ)、Foxp3+細胞(制御性T細胞)、CD8+細胞の浸潤と術前血清CRP値との間に正の相関を認め、これらCD163+細胞、Foxp3+細胞、CD8+細胞浸潤が多い例で癌特異的生存が有意に不良であること見出し、国際学術誌に報告した。最終年度では、現在の免疫療法である免疫チェックポイント阻害剤療法における炎症反応の意義を明らかとするため、データベースを構築し、炎症反応の推移と治療効果との関連について予備解析を開始している。本研究期間で、腎細胞癌において全身性炎症反応と抗腫瘍免疫抑制に相関があり、予後にも関連することを見出した。炎症マーカーの免疫療法における免疫バイオマーカーとしての有用性を明らかとし、新規免疫療法の構築に結び付くように今後の研究を計画している。
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