研究課題/領域番号 |
16K11000
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
石井 健一朗 三重大学, 医学系研究科, 助教 (90397513)
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研究分担者 |
白石 泰三 三重大学, 医学系研究科, 客員教授 (30162762)
広川 佳史 三重大学, 医学系研究科, 講師 (30322738)
杉村 芳樹 三重大学, 医学系研究科, 教授 (90179151)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 癌細胞分化の揺らぎ / 線維芽細胞の多様性 / 前立腺癌患者由来線維芽細胞 / in vitro共培養実験 |
研究実績の概要 |
本年度は、前立腺間質における線維芽細胞の多様性がアンドロゲン感受性ヒト前立腺癌LNCaP細胞に与える影響を検討する目的で、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られた線維芽細胞とLNCaP細胞とのin vitro共培養実験を施行した。実験には市販されている正常ヒト前立腺間質細胞PrSCを比較対象細胞とし、摘出手術材料より初代培養にて単離したヒト前立腺癌患者由来線維芽細胞pcPrFsを用いた。Falconセルカルチャーインサートを用いたin vitro共培養実験では、LNCaP細胞に対してPrSCおよびpcPrFsそれぞれを組み合わせて4日間の共培養を行った後に、LNCaP細胞の細胞増殖率の変化を比較検討した。その結果、PrSCおよびpcPrFs (-M5, -M6, -M7)はLNCaP細胞の増殖率を有意に上昇させた。一方、pcPrFs (-M10, -M11)はLNCaP細胞の増殖率を有意に低下させた。次に、LNCaP細胞に対してPrSCおよびpcPrFsそれぞれを組み合わせて1もしくは2日間の共培養を行った後に癌抑制遺伝子TP53 mRNA発現量を測定したところ、PrSCおよびpcPrFsいずれの線維芽細胞との共培養群でもTP53 mRNA量に明らかな変化は認められなかった。 以上の結果より、癌患者由来線維芽細胞が産生・分泌するパラクライン因子には、LNCaP細胞の増殖を促進させる細胞増殖因子やサイトカインとは別に、LNCaP細胞の増殖を抑制させる何らかの因子が含まれている可能性が示唆された。この点を癌細胞の増殖抑制=癌細胞の分化誘導と捉え、癌抑制遺伝子の発現変化を検討したものの、TP53では説明できない結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は癌抑制遺伝子としてTP53の検討しか行うことができず、線維芽細胞との共培養で本当にLNCaP細胞の分化が変化しないのかどうかが確定できなかった。原因であるが、前立腺癌組織から初代培養した複数の線維芽細胞を上手く培養できなかったことが大きく寄与している。この点を改良するために現在、in vitro共培養実験に使用できる線維芽細胞を再度、確認中であり、次年度までに改善したい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に苦労した線維芽細胞の培養については、凍結保存した時の線維芽細胞の状態が大きく寄与しており、状態の良い線維芽細胞しか凍結保存しない、という研究室内のルールを策定した。一方、in vitro共培養実験にて既に作製したcDNAを用いて、TP53以外の癌抑制遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにて検討予定としており、本年度の遅れを早急に取り戻せるよう計画している。これらの結果を元に、次年度は癌抑制遺伝子のDNAメチル化状態を検討する予定である。
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