研究課題
本年度は、前立腺癌細胞におけるアンドロゲン感受性の強さと線維芽細胞からのパラクライン刺激への反応性との関連を検討する目的で、アンドロゲン感受性ヒト前立腺癌LNCaP細胞から樹立したアンドロゲン低感受性の亜株E9, F10および不応性の亜株AIDLと、複数の前立腺癌患者の針生検組織から初代培養して得られた線維芽細胞pcPrFsとのin vitro共培養実験を施行した。pcPrFsとのin vitro共培養において、E9およびAIDL細胞の増殖率は有意に上昇した。また、E9細胞では細胞内前立腺特異抗原PSAタンパク質発現量が増加した。一方、F10細胞の増殖率および細胞内PSAタンパク質発現量に変化は認められなかった。精製EGF処理したE9およびAIDL細胞の増殖率は有意に上昇するとともに、リン酸化AktおよびMAPKタンパク質発現量が顕著に増加した。一方、F10細胞の増殖率は精製EGF処理でも変化しなかった。さらに、精製EGF処理したF10細胞ではリン酸化AktおよびMAPKタンパク質発現量に変化は認められなかった。精製EGF処理したE9細胞からのPSA分泌量は有意に増加した。F10細胞ではアンドロゲン受容体ARのスプライスバリアントAR-V7の発現を認めた。以上の結果より、我々はLNCaPを親株とした2つのアンドロゲン低感受性の亜株(E9およびF10細胞)を用いることで、アンドロゲン低感受性という共通の特徴を有する癌細胞であっても線維芽細胞からのパラクライン刺激に反応する癌細胞(E9細胞)と反応しない癌細胞(F10細胞)が共存している可能性を明らかにした。また、アンドロゲン不応性の前立腺癌細胞であっても線維芽細胞からのパラクライン刺激に反応したことは、ホルモン治療が無効な低分化な前立腺癌細胞に対しては癌細胞内シグナル伝達経路が重要な治療標的となることを示唆するものと考えた。
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