研究実績の概要 |
予後不良の転移性腎がんの新規治療標的および血液バイオマーカーを同定するため、腎がん特異的に高発現する遺伝子、分子の単離が行われているが、臨床応用に至ったものはない。がん細胞はエクソソームと呼ばれる細胞外小胞を分泌し、癌の微小環境を制御しているといわれており、われわれは腎がん組織特異的なエクソソームのみを抽出することに成功した。本法によって抽出したものがエクソソーム(細胞外小胞)であることを、ナノトラッキング解析による粒子径測定、透過型電子顕微鏡による形態確認、ウェスタンブロットによりエクソソーム特異的なタンパクの発現の確認を終了した。 その上で、本手法を用いて腎がん特異的エクソソームに含まれるタンパク質を質量分析器を用いて網羅的に解析を行った。さらに候補となるタンパクについては腎がん患者、健常者の血清を用いてSRM(選択反応モニタリング)による質量分析法による定量を行い、血液バイオマーカーとしての妥当性を検討した。最終的には多くの候補タンパクのうち,LAIR1につき機能解析を行った. 現時点では血液バイオマーカーとしては臨床応用できる段階ではないが,腎がん特異的に高発現するタンパクとして機能解析を行った結果を報告した. さらに研究を進めるために腎がんおよび正常腎組織由来エクソソームを当院で手術を施行し、得た検体を用いてそれぞれ採取を継続してきた。最終年度においては、癌組織,正常腎組織,癌組織からの培養エクソソーム,正常腎組織からの培養エクソソーム,術前に採取した血清エクソソームをセットとして,5検体セット,18組につき,網羅的タンパク質解析を開始することができた. これにより,より最もらしい血液バイオマーカーの候補タンパクを絞ることができることになる.
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