研究課題
去勢抵抗性前立腺癌における、RegⅣ・OLFM4の血清マーカーおよび治療標的としての意義を明らかにすることを目標に、まず臨床検体を用いた血清RegⅣの測定と病理検体を用いたRegⅣ・OLFM4の免疫組織学的検討を行った。血清RegⅣ値は、Stageが進行した症例や、去勢抵抗性前立腺癌の症例で高発現し、血清腫瘍マーカーとしての有効性が確認された。さらに血清でRegⅣ値が上昇していた症例は組織免疫組織染色法でもRegⅣの高発現が確認された。血清RegⅣ値は腫瘍マーカーとしての臨床応用が期待される。また、RegⅣの過剰発現が抗がん剤(ドセタキセルと5FU)への抵抗性獲得に関与していることをin vitroで確認した。RegⅣの血清腫瘍マーカーは、薬剤耐性へのpredictive markerとなるだけでなく、RegⅣの発現抑制が治療効果を高める可能性が示唆された。RegⅣがより低侵襲な診断として、前立腺癌治療の改善に貢献できる可能性を示した。次にOLFM4の免疫組織染色を前立腺癌検体で行ったところ、予想と反してgleason scoreの低い症例でOLFM4の高発現が認められ、OLFM4の発現は予後良好と相関する傾向があった。また研究期間中に、OLFM4の発現低下が前立腺癌の進展に関与することを示す論文報告があり、私たちのOLFM4免疫組織染色結果と同様な結果であった。OLFM4に関しては、血清OLFM4診断マーカーとしての可能性を検討する価値があると考えているが、治療標的としては可能性が低いと考えられる。