研究課題/領域番号 |
16K11008
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松本 洋明 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60610673)
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研究分担者 |
山本 義明 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (30593298)
清木 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50226619)
松山 豪泰 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70209667)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 3Dオルガノイド / YAP / ARHGAP18 |
研究実績の概要 |
本年度は3Dオルガノイド作成を主研究課題として行った。まずは山口大学人医学系研究等審査委員会にて「三次元培養技術を用いた尿路悪性腫瘍における進展と薬剤耐性獲得機序の解析に関する研究:承認番号H28-112」審査と承認を得たのち、前立腺癌全摘出標本より3Dオルガノイドの作成を行った。共同獣医学部からの指導も受けつつ、ほぼすべての症例から初代3Dオルガノイド培養の確立が可能となった。今後は安定した継代技術の確立と機能解析を進めていく予定である。 また、並行して前立腺癌におけるYAPの関連を検討した。YAPはHippo signal伝達系の主要な転写因子であり、Hippo signal活性化することでYAP/TAZは細胞質に留まり、細胞増殖が抑制されるが、YAP/TAZの核移行すると細胞増殖が誘導され、癌の発生・進展に寄与することが報告されている。また、YAPは組織の3次元構築や硬度を制御する因子としても機能しており、メカノトランスダクションの重要分子と言われており、臨床的に硬結を有する前立腺癌でも重要な役割を果たしていることが推測される。そこで、本年は基礎的研究として、細胞株でのYAPの発現と臨床検体での免疫染色でのYAPの発現を検討した。細胞株ではAR非依存性のPC3、DU145細胞にてAR依存性のLNCaP、22RV1細胞より優位にYAPの発現亢進を認めた。 またハイリスク前立腺全摘標本にて81例を対象にYAP、リン酸化YAP、YAPの下流分子であるARHGAP18の発現を免疫組織化学染色にて検討した。単変量解析にてYAPはPSA値グリソンスコア、皮膜外浸潤の有無と有意な相関を認め、ARHGAP18は直腸診での硬結の有無と有意な相関を認めた。症例数が少なくYAP発現の有無における無再発生存率ではp=0.1393であったが、高発現群は予後不良の傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒトでの検体を用いるため、まずIRB承認を得なければならなかったことと、症例集積が思うように進まない点。また3Dオルガノイド作成、継代の技術的な課題があったため。
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今後の研究の推進方策 |
山口大学共同獣医学部とのオルガノイド安定樹立、継代についての技術協力が得られたため、引き続きヒトからの前立腺癌組織採取と3Dオルガノイド樹立を進めるとともに、去勢環境、薬剤投与での細動の遺伝子発現、増殖、浸潤への影響を遺伝発現、タンパク質発現の両面から検討する。 また、オルガノイド樹立の基礎的確認としてマウス皮下移植腫瘍作成を行い、採取した元の前立腺癌組織とマウス皮下移植腫瘍の組織学的相同性の検討を確認し、オルガノイド樹立確実性を担保する。 そのうえで2次元培養細胞との去勢環境、薬物投与環境での遺伝子発現変化を対比して、新規メカニズムの解明を進める。 ターゲット分子の同定ができた時点で実際のヒト末梢血採血からのcell free DNA、マイクロRNAを採取して、症例の集積を行い、次世代シーケンサーによる解析を行い、去勢抵抗性前立腺癌患者の予後予測マーカーとなるか検討を行う。 また、前立腺癌患者よりの自排尿中剥離癌細胞からの3Dオルガノイド樹立を行うことを試みて(IRB承認済)、特許の取得と尿による去勢抵抗性前立腺癌患者の予後や薬剤感受性推測モデルの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーを用いた解析等に進んでいないため、使用額が目標を下回ったと思われる。次年度は3Dオルガノイドを用いた遺伝子解析、機能解析を遂行するため、次年度使用額を合わせて計画的に使用していく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
3Dオルガノイドを用いた薬剤感受性、去勢抵抗性に関する遺伝子発現解析、機能解析を行う。まずはin vitro実験系で行い。次世代シーケンサーを用いた解析を行い、現在までの平面培養系で行われていた実験系の生体内との現象の乖離が起こっている理由を解明していく。 そのため引き続き3D培養系試薬、細胞解析に用いる試薬と次世代シーケンサーに関する試薬、解析費が必要である。
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