研究課題/領域番号 |
16K11010
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
猪口 淳一 九州大学, 大学病院, 講師 (10403924)
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研究分担者 |
村田 正治 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 准教授 (30304744)
片山 佳樹 九州大学, 工学研究院, 教授 (70284528)
姜 貞勲 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50423512)
清島 圭二郎 九州大学, 大学病院, 助教 (80444818)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 上部尿路癌 / 腎盂癌 / 尿管癌 / アリストロキア酸 / 癌診断 / 腫瘍学 / 泌尿器科学 / 膀胱癌 |
研究実績の概要 |
①本邦での上部尿路癌におけるアリストロキア酸の関与に関する検討 台湾では上部尿路癌患者のうちアリストロキア酸-DNA付加物を約6割に認め、p53の特徴的変異も高頻度で認めると報告されている。一方、本邦での上部尿路癌におけるアリストロキア酸の関与は不明である。これまでに解析した33例ではアリストロキア酸-DNA付加物は6%で検出された。今後、症例を集積することで、実際の頻度が明らかにできると思われる。これまでの報告では、アリストロキア酸による上部尿路癌が、若年者、女性に多く、対側同時性癌の頻度も高いが、喫煙者の頻度はむしろ低いとの可能性が指摘されている。そこで、我々の解析結果を他の日本人における臨床的特徴と比較検討するため、本邦での上部尿路癌の臨床的特徴を日本泌尿器科学会による癌登録情報を用いて解析した。上部尿路癌と膀胱癌の比較では、臨床病期T2とT3の比較において、T3では有意に予後不良であり、この傾向が上部尿路癌でより顕著であったことを報告した。また、腎尿管全摘除術を行った臨床的リンパ節転移のない患者では、リンパ節郭清による明らかな予後の改善は認めなかった。これらより得た日本人の臨床的特徴と、今回の研究にて明らかにされるアリストロキア酸による上部尿路癌の臨床的特徴を比較検討する予定である。 ②尿中活性型PKCαを標的とした新規スクリーニング法の開発 臨床現場において尿を用いた尿路上皮癌のスクリーニング法としては尿細胞診が最も汎用されている。当施設での膀胱癌症例を後ろ向きに検討した結果、尿細胞診陽性症例では術後膀胱内再発の頻度が高かったが、尿細胞診の感度はlow grade腫瘍では低かった。我々は、これまでに活性型PKCαを尿検体より検出できることを確認した。今後、検査法、検体保存法の最適化を進め、検査法の有用性を特に尿細胞診と比較していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①本邦での上部尿路癌におけるアリストロキア酸の関与に関する検討 現在、症例集積中である。これまでに33症例についてDNAの抽出を行った後、アリストロキア酸-DNA付加物を検索したところ、2例(6%)のみにアリストロキア酸-DNA付加物を検出した。一方DNAシークエンスの結果、2例ともアリストロキア酸によるp53遺伝子の特徴的遺伝子変異は認めなかった。台湾での同様の研究においては約60%にアリストロキア酸-DNA付加物が検出されており、本邦ではアリストロキア酸による上部尿路癌に頻度は低い可能性が考えられた。 ②尿中活性型PKCαを標的とした新規スクリーニング法の開発 九州大学医系地区部局臨床倫理審査委員会において課題名「尿路上皮癌における尿中活性型プロテインキナーゼCα(PKCα)の診断およびバイオマーカーとしての機能評価」の研究実施許可を平成29年7月5日に得た。(許可番号:28-110, 変更後許可番号:28-393)許可を得た後、症例集積開始した。対象患者から同意を得て尿を採取し、尿中の活性型PKCαを質量分析装置にて検出試みたところ、一部の検体では活性型PKCαを検出しえた。同時に同一検体を凍結後に解凍し測定すると活性が極端に低下することも判明した。現在、測定条件の最適化に向け検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
①本邦での上部尿路癌におけるアリストロキア酸の関与に関する検討 これまでの解析により本邦ではアリストロキア酸による上部尿路癌の頻度は低い可能性が考えられる。当初の研究計画にそって50例まで症例を集積し、中間解析としてアリストロキア酸-DNA付加物の検出、特徴的p53遺伝子変異を検索する予定である。その時点でアリストロキア酸-DNA付加物の検出頻度が15%未満であればこれを最終解析とする。一方、研究計画に沿って、FGF3、Ras遺伝子の変異頻度については別途解析を行う。 ②尿中活性型PKCαを標的とした新規スクリーニング法の開発 質量分析装置による測定条件、検体の保存方法を最適化したのち、尿路上皮癌患者及び対照群からの検体にて活性型PKCαを測定し、カットオフ値を設定し当検出法の感度を算出する。感度に関しては、尿細胞診、NMP-22、尿中BTAなどの既存の臨床検査法との比較を行う。同時に、安価に測定を行うためにELISA等による測定法の開発に着手する。
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