研究課題/領域番号 |
16K11015
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉野 裕史 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (90642611)
|
研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マイクロRNA / 治療標的型マイクロRNA / 尿路上皮癌 |
研究実績の概要 |
進行性尿路上皮癌の予後は不良であり、再発・転移症例に対してGC療法が1stライン治療であるが、治療反応が乏しい症例や、治療後に再発をきたす症例も少なからず存在する。これらの症例に対して、有効な2ndラインの治療法は確立されていない。進行性尿路上皮癌や治療抵抗尿路上皮癌の新規治療法の開発には、これら癌細胞で活性化している分子経路を明らかにして、その活性化経路を遮断する戦略が必要である。申請者らは、次世代シークエンサーを用いた「全ゲノム尿路上皮癌マイクロRNA発現プロファイル」を作成し、これまで明らかとなっていない「癌促進型マイクロRNA」「癌抑制型マイクロRNA」の探索に成功している。そして、本研究は、「治療標的型マイクロRNA」を起点として、尿路上皮癌の再発や治療抵抗性に関わる機能性RNA分子ネットワークの探索を行い、更にその活性化経路を遮断する事により、尿路上皮癌の増殖や転移を抑制する事が可能であるか検討するものである。 今年度の研究成果として、マイクロRNA-199a-3p/-5pおよびマイクロRNA-199b-3p/-5pは膀胱癌組織で有意に発現が抑制されていることを解明した。これらのマイクロRNAを核酸導入すると癌細胞の遊走・浸潤能が有意に抑制された。標的遺伝子探索ではIntegrin α3 (ITGA3)を直接制御することが明らかとなった。TCGAによるRNA発現解析ではITGA3は膀胱癌組織において発現が上昇しており、またマイクロRNA-199 familyの低発現群は高発現群に比べ有意に予後不良であった。また、その他のマイクロRNAでも、マイクロRNA-139-5p/3pやマイクロRNA-26a-5p/26b-5pが転移に関わる遺伝子を制御することで治療標的型マイクロRNAとして機能することを解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は治療標的探索型マイクロRNAの機能的な解析が進んで、関連の論文を3つ投稿することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
癌抑制型マイクロRNANAが制御する標的遺伝子群の網羅的探索と機能分類から、さらに機能性RNA分子ネットワークを探索する予定である。探索された分子ネットワークが患者症例で活性化されているか、膀胱癌臨床検体を用いて検証する予定である。膀胱癌で活性化されているシグナル伝達経路を遮断するマイクロRNANAや分子標的薬剤や既存の治療薬の選択を行う予定である。選択された薬剤について細胞株を用いて、シグナル伝達経路を遮断する事による抗腫瘍効果を解析する予定である。
|