研究課題/領域番号 |
16K11017
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
舛森 直哉 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20295356)
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研究分担者 |
西山 直隆 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70619030)
進藤 哲哉 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80749292)
新海 信雄 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (40772398)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬剤耐性化 / 膀胱癌 / 5-Aza-CdR |
研究実績の概要 |
5-Aza-CdRを用いた細胞増殖能試験の妥当性の検証を行うために、新たに膀胱癌細胞株EJ-138, J82を用いてシスプラチン(CDDP)耐性株を作成、樹立に成功した。すでに樹立していたCDDP耐性株T24-RC, UMUC3-RCを用いてCDDP濃度を減量し、5-Aza-CdRが薬剤感受性の再獲得を行っているかを検証。CDDP減量を行った細胞増殖試験においてもCDDP感受性を獲得していることを証明した。現在、薬剤による副作用を最小限に抑え薬剤の効果を高める至適濃度を設定するために、CDDP濃度を減量しin vivoの実験を行っている。 5-Aza-CdRにて薬剤の再感受性獲得が獲得できなかったゲムシタビン(GEM)耐性株T24-RG, UMUC3-RGに対してヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を用いた細胞増殖試験を行ったが、HDACiでは薬剤の再感受性獲得ができなかった。GEM耐性株の薬剤耐性化はエピジェネティックの変化ではないことが考えられた。 3D-Gene発現解析にて同定された6遺伝子のうちADAMTS1, SERPINB2に対して、薬剤耐性株T24-RC、UMUC3-RC、T24-RG、UMUC3-RGを用いてsiRNAを用いたノックダウンを行った。ADAMTS1, SERPINB2をノックダウンした細胞株については、ノックダウンしない薬剤耐細胞株と比較し有意な増殖抑制を認めた。現在、薬剤耐性を持たない親株T24, UMUC3に対してADAMTS1, SERPINB2を強制発現し、薬剤耐性化を獲得するか検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の妥当性検証のための新規薬剤耐性株の樹立については新たに膀胱癌細胞株EJ-138, J82を用いてシスプラチン(CDDP)耐性株を作成、樹立に成功した。ゲムシタビン(GEM)耐性株に対するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を用いた細胞増殖実験もすでに行っている。HDACiのGEM耐性株に対する効果に関しては、HDACi 投与後もGEMの感受性に変化は見られなかった。以上からGEM耐性株についてはエピジェネティックの変化による薬剤再感受性は獲得できないと判断された。今後はゲノム網羅的な解析を追加し、新たな標的遺伝子を遺伝子発現の観点から追及する。以上より5-Aza-CdR、HDACiを用いた新規の治療の開発はおおむね予定通り進んでいる。 3D-Gene発現解析にて同定された6遺伝子のうちADAMTS1, SERPINB2に対して、薬剤耐性株T24-RC、UMUC3-RC、T24-RG、UMUC3-RGを用いてsiRNAを用いたノックダウンを行った。ADAMTS1, SERPINB2をノックダウンした細胞株については、ノックダウンしない薬剤耐細胞株と比較し有意な増殖抑制を認めた。現在、薬剤耐性を持たない親株T24, UMUC3に対してADAMTS1, SERPINB2を強制発現し、薬剤耐性化を獲得するか検証している。以上より化学療法の予後予測マーカーの開発に関してもおおむね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
CDDP耐性株に対して5-Aza-CdR、CDDPを組み合わせたin vivoの実験を行い、薬剤による副作用を最小限に抑え薬剤の効果を高める至適濃度を設定する。至適濃度設定後はPhase1臨床試験を計画する。 薬剤耐性化の機序については5-Aza-CdR がEndgeneous retrovirus gene, interferon response geneの発現を亢進していると報告されている。CDDP耐性株では5-Aza-CdR投与後に上記の遺伝子発現亢進が確認されているが、GEM耐性株では発現の亢進は認められなかった。今後、パイロシークエンスを用いて上記の遺伝子に対して各細胞株で5-Aza-CdR投与後にメチル化の状態変化について検討する。 ADAMTS1, SERPINB2を薬剤耐性を持たない親株T24, UMUC3に対してリポフェクション法を用いてを強制発現し、薬剤耐性化を獲得するか検証する。
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