研究実績の概要 |
転移性膀胱癌に対する標準的化学療法としてGemcitabine (GEM)とCisplatin (CDDP)の併用(GC療法)が普及しているが、生存期間は13.8ヶ月と短く(J Clin Oncol, 2000)、予後不良である。このような背景から、我々はCDDP/GEM耐性膀胱癌細胞株を樹立し、化学療法の効果予測マーカーの同定ならびに化学療法抵抗性に対する新規治療法の開発を目指した研究を行ってきた。これまで尿路上皮癌に対しCDDP/GEM耐性膀胱癌細胞株を用いてゲノム網羅的なDNAメチル化解析を行い、エピジェネティクス異常が化学療法抵抗性に関わる事、in vitroで5-Aza-CdRに化学療法再感受性効果があることを見いだした(Oncotarget, 2018)。 転移を有する膀胱癌に対する2次治療として5-aza-CdRの臨床研究への応用に向け、ヌードマウスを用いたin vivoでの研究を施行した。in vivoの実験ではCDDP耐性膀胱癌細胞株に5-aza-CdR を投与した後にヌードマウスへ移植、その後CDDPを腹腔内投与し腫瘍のサイズを計測した。5-aza-CdRはmockおよびCDDP単独投与群と比較し、有意な腫瘍の増殖抑制効果をみとめた。低用量の5-aza-CdR(0.1μM, 48時間)と CDDPとの相乗効果に関しても明らかになった。現在、化学療法抵抗性膀胱癌に対して5-aza-CdRの効果を認め、副作用を最小限に抑える5-aza-CdRおよびCDDPの濃度を調整中であり、臨床研究を計画している。 また化学療法抵抗性膀胱癌細胞株で5-aza-CdRを暴露した後に、癌細胞内でEndogenous retrovirus gene、virus defense geneが発現亢進することを確認しており、生体内での5-aza-CdRの効果発現の機序を解明しつつある。
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