研究課題
我々は前立腺癌の発生や進展に、腫瘍内におけるレニン-アンジオテンシン系(Renin-angiotensin system: RAS)が関係しており、アンジオテンシン2(Ang-II)の受容体ブロッカーの一つであるAT1受容体のブロッカー (Angiotensin Receptor Blocker: ARB)が抗腫瘍効果を持つことを証明してきた。そのメカニズムの一つに、ARBが前立腺癌細胞のアンドロゲン受容体(Androgen receptor: AR)の発現を抑制することが認められた。この研究では、Ang-IIのもう一つの受容体であるAT2受容体が前立腺癌の発生に関わっているかを、in vitroおよびin vivo実験で検証している。前立腺癌細胞であるLNCaP細胞を用いて、細胞増殖にはMTTアッセイを使って測定した。AT2受容体のアゴニストであるC21(スェーデンのVicore PharmaAB社から提供)を使用した。また、PSAの転写活性を見るために、PSAプロモータ(6Kb領域)のルシフェラーゼレポータープラスミドを使用し、LNCaP細胞に遺伝子導入して測定した。MTTアッセイでは、LNCaP細胞をC21で刺激して3日後には、用量依存的に細胞増殖が抑制された。さらに、PSAプロモーターによるルシフェラーゼアッセイでは、DHTで活性化されたルシフェラーゼはC21添加によって用量依存的に抑制された。15週令で前立腺癌を発生するトランスジェニックラット(TRAP)に、3週令からC21を12週間投与した(1, 2mg/kg/day)群と非投与群を対照群として設定した。投与12週後に、前立腺を採取した。現在、病理学的に癌発生率やアポトーシス発生について検討している。また、前立腺からタンパクを抽出して、ARや増殖系シグナル伝達系タンパクの発現や活性化を調べているところである。
2: おおむね順調に進展している
実験はおおむね順調である。
細胞実験では、ARを有する他の前立腺癌細胞を用いて実験を進めていきたい。また、動物実験では、できればヌードマウスに前立腺癌細胞を移植して、それにC21を投与することによって抗腫瘍効果について検討する追加実験を予定したい。
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