研究課題/領域番号 |
16K11019
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
上村 博司 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (50244439)
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研究分担者 |
河原 崇司 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, その他 (40555570)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / AT2レセプター / レニン-アンジオテンシン系 |
研究実績の概要 |
Renin-angiotensin system: RAS)が関係しており、アンジオテンシン2(Ang-II)の受容体ブロッカーの一つであるAT1受容体のブロッカー (Angiotensin Receptor Blocker: ARB)が抗腫瘍効果を持つことを証明してきた。そのメカニズムの一つに、ARBが前立腺癌細胞のアンドロゲン受容体(Androgen receptor: AR)の発現を抑制することが認められた。この研究では、Ang-IIのもう一つの受容体であるAT2受容体が前立腺癌の発生に関わっているかを、in vitroおよびin vivo実験で検証している。 前立腺癌細胞であるLNCaP細胞を用いて、細胞増殖にはMTTアッセイを使って測定した。AT2受容体のアゴニストであるC21(スェーデンのVicore PharmaAB社から提供)を使用した。また、PSAの転写活性を見るために、PSAプロモータ(6Kb領域)のルシフェラーゼレポータープラスミドを使用し、LNCaP細胞に遺伝子導入して測定した。MTTアッセイでは、LNCaP細胞をC21で刺激して3日後には、用量依存的に細胞増殖が抑制された。さらに、PSAプロモーターによるルシフェラーゼアッセイでは、DHTで活性化されたルシフェラーゼはC21添加によって用量依存的に抑制された。 15週令で前立腺癌を発生するトランスジェニックラット(TRAP)に、3週令からC21を12週間投与した(1, 2mg/kg/day)群と非投与群を対照群として設定した。投与12週後に、前立腺を採取した。現在、病理学的に癌発生率やアポトーシス発生について検討した。また、前立腺からタンパクを抽出して、ARや増殖系シグナル伝達系タンパクの発現や活性化を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AT2受容体のアゴニストであるC21を前立腺癌細胞のLNCaPと22RV1に刺激すると、用量依存的に細胞増殖が抑制された。PSAプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイでは、C21投与により用量依存的にルシフェラーゼ活性は抑制された。その原因の一つとして、LNCaP細胞のアンドロゲン受容体(AR)発現を調べると、C21投与によってARタンパクの発現が抑制される事がウェスタンブロット法で証明された。 次に、C21を前立腺癌発生するトランスジェニックラット(TRAP)に12週間にわたって経口投与すると、前立腺側葉の前立腺癌発生がC21投与群(2mg/kg/day)でコントロール群に比べて有意差をもって減少していることが病理学的に示された。C21は降圧剤として開発されており、ラットの血圧を測定するとC21用量依存的に血圧の低下も認められた。C21を12週間投与されたTRAPの前立腺を摘出してARタンパクの発現を調べると、C21用量依存的にARタンパクの発現は抑制されていることがウェスタンブロット法にて確認された。これらの結果から、C21は前立腺でのAR発現を抑制することによって、前立腺癌の発生抑制効果を持つことが予想された。
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今後の研究の推進方策 |
上記の動物実験にて得られた前立腺組織における遺伝子発現の変化を、C21投与群とコントロール群で比較する。具体的には、採取した前立腺側葉の組織からDNAを抽出して、両群でのDNA発現の違いを、DNAマイクロアレイを使って解析する。そこで発現が亢進あるいは減弱している遺伝子群のプロファイリングを行い、特徴的な遺伝子変化があるかどうかを調べる。さらに、発現に大きな変化があった遺伝子をピックアップして、その遺伝子変化が前立腺癌細胞で起きているかを検証する。また、それらの遺伝子がヒト前立腺癌組織でどのように発現しているかを免疫組織化学染色(免染)で調べ、癌の悪性度やホルモ法の感受性、あるいは予後との相関があるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に行う実験に必要な消耗品の確保と実験助手の給与を担保するために1,000,000円を次年度に持ち越した。
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