研究課題/領域番号 |
16K11023
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
惠谷 俊紀 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (30600754)
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研究分担者 |
河合 憲康 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20254279)
内木 綾 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20509236)
安藤 亮介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (30381867)
飯田 啓太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (30713945)
安井 孝周 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40326153)
内木 拓 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50551272)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アポトーシス |
研究実績の概要 |
樹立細胞株PCai1、及びヒト前立腺癌細胞株PC3を用いて、in vitroでLSD1をLSD1阻害剤であるNCL1およびNCD38によって特異的に抑制し、その効果を検討した。WST-8アッセイでは、いずれの細胞株・いずれの薬剤においても、濃度依存的な細胞増殖抑制効果を認めた。ウェスタンブロットでは、いずれの細胞株においてもLSD1阻害剤の投与でアポトーシスが誘導されたが、CyclinD1やCyclin Dependent Kinase、p21、p27などの細胞周期関連蛋白の変化は明らかではなかった。ChIPアッセイでは、PCai1において増殖に関与すると考えられるProbasinのプロモーター領域におけるメチル化状態の変化が認められた。また、フローサイトメトリーでは、これらの細胞株に対して、LSD1阻害剤を投与することによりアポトーシスの誘導が認められたが、細胞周期の変化は明らかではなかった。 また、これらin vitroの実験と並行して、PCai1を去勢ヌードマウスに皮下移植した、去勢抵抗性前立腺癌皮下移植モデルにおいて、NCL1およびNCD38を用いたLSD1阻害剤投与実験を行い、その効果と有害事象を検討した。この実験においては、LSD1阻害剤の投与によって、コントロール群に比べ、有意に皮下腫瘍の増殖が抑制された。また、LSD1阻害剤の投与による明らかな有害事象は認めなかった。そして、皮下腫瘍の免疫染色による評価では、皮下腫瘍においてアポトーシスの誘導と腫瘍血管の減少が認められた。オートファジー阻害剤の投与あるいはLSD1阻害剤との併用実験については、上記の実験に引き続いて投与量や投与間隔の最適化のための実験を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度については、主にin vitro実験を主とした研究を予定していた。その内容としては、LSD1阻害剤の効果のメカニズムをWST-8アッセイ、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、ChIPアッセイ等で検討することを予定していた。これらの実験系で、LSD1阻害剤がいずれの細胞株についても濃度依存的な生存細胞数抑制効果を持つこと、その効果のメカニズムとしてアポトーシスの誘導が示唆されること、PCai1においてはProbasinのメチル化状態の変化がその効果に寄与していること、などを示す結果を得た。現在はこれらの成果を踏まえ、PC3におけるChIPアッセイの予備実験や実験プランの修正を行っている。また、WST-8アッセイやフローサイトメトリーにおいて、LSD1阻害剤に加えオートファジー阻害剤を併用した効果を解析していくにあたり、適切な投与濃度などの実験系の構築が進んでいる。 また、動物モデルを用いた実験においては、LSD1阻害剤が去勢抵抗性前立腺癌動物モデルでも効果を発揮すると予測されること、予備実験での動物数の範囲内ではあるが重篤な有害事象を示さないこと、が確認できた。引き続き、in vitroの結果もあわせて検討しながら、オートファジー阻害剤も併用する動物モデル実験の計画・施行を進めていくことが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vitro実験においては、LSD1阻害剤とオートファジー阻害剤の併用により発揮される効果のメカニズムについて、WSTアッセイ、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー等によりさらに詳細に検討する。結果によっては、透過型電子顕微鏡による観察や、細胞内小器官の多重免疫染色、酸化ストレス定量などの実験手法も用いて評価する。 上記の結果も踏まえ、LSD1阻害剤にオートファジー阻害剤を併用する去勢抵抗性前立腺癌皮下移植モデル実験を進めていく。LSD1阻害剤としてはNCL1およびNCD38を用いる。オートファジー制御との併用効果を検証するため、オートファジー阻害剤のクロロキン(CQ)を単独投与、あるいはLSD1阻害剤とCQを併用する群を設ける。投与経路は腹腔内投与とする。至適投与回数を検証するとともに、投与開始後2カ月をめどにサクリファイスを行い解析する。LSD1メチル化の基質であるH3K4me2・H3K9me2等のLSD1関連タンパク、LC3やBeclin 1、p62、mTOR等のオートファジー関連タンパクのほか、in vitro実験でLSD1阻害剤あるいはオートファジー阻害剤の効果に関与するものとして推測された因子について、変化の有無を検討する。さらに、LSD1阻害剤およびオートファジー阻害剤の併用が生体に及ぼす影響はまだ明らかではないため、諸臓器を摘出し、重量及び組織変化で検証する。これらによりLSD1阻害剤およびオートファジー阻害剤投与における生体への影響を調べ、至適投与濃度、投与回数を明らかにする。さらに、これらの薬剤の併用によりin vivoにおいても有意な併用効果が得られた場合は、各群の血液サンプルや皮下腫瘍を使用して、マイクロアレイ解析によるmRNAの発現変化の解析もしくは次世代シーケンサーによる遺伝子変異の検索を行う。
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