研究課題/領域番号 |
16K11024
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
川口 誠 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50204699)
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研究分担者 |
三浦 裕 至学館大学, 健康科学部, 教授 (90285198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ATBF1 / SNP / 脳梗塞 / 肺血栓塞栓症 / 川崎病 |
研究実績の概要 |
ATBF1はDNA結合タンパク質であり、4個のHomeotic domainと23個のZinc fingerを持つ転写調節因子である。この因子が転写調節する標的遺伝子として、200種類以上がマイクロアレイ発現解析から判明している。その中で血小板由来増殖因子受容体B(PDGFRB)に着目して研究を展開してきた。PDGFRBは血管壁周囲細胞(血管外皮細胞、平滑筋細胞)の分化誘導因子であることの解明が進んだ。この異常から、血管系の様々な異常が起こることが予想される。 大規模ゲノムスクリーニグによる疾患特異性の高い責任遺伝子の解析結果として、心房細動、脳卒中、冠動脈疾患、動脈硬化などの心臓血管系の疾患が明らかになってきた。 モデル動物のマウスを使った実験で、マウス胎児の肺でATBF1は高発現していることを明らかにしてきた。ATBF1は肺で高発現していることから、肺を構成する細胞群の細胞周期を止め、肺胞内の細胞数を減らすことで肺胞腔の形成に貢献している可能性が示唆された。ATBF1の発現量が減少することにより、肺胞内の細胞数が異常増加し、肺高血圧等の循環器障害を惹起する可能性も想定された。肺胞周囲に多数の毛細血管が発達してガス交換の場となっているので、肺の実質細胞数が過剰になると、肺高血圧症を誘引し、さらに心臓不全を引き起こす危険性もある。このような心肺機能への影響力を、モデル動物を使って検証する目的で、KOマウスの作成を試みて、詳細な病態変化及び病理組織変化の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ATBF1ノックアウトマウスを作成は完了した。 2アリルともKOされたATBF1ノックアウトマウス(ホモノックアウト)は胎児死亡する。ATBF1ノックアウトマウス(ヘテロノックアウト)は生育できる。 (2)ヘテロノックアウトマウスの個体を使った解析を行った。 その結果、野生型と比較して顕著は病理学的変化は認められなかった。ホモノックアウトマウスの肺組織を観察すると肺胞腔が認められない充実組織であった。血管の直径が小さくなっている可能性が出てきた。これは周囲細胞から圧迫された結果であるのか、血管周囲細胞の分化発達が抑制された結果であるのかはまだ不明である。
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今後の研究の推進方策 |
私たちは、サーカディアンリズムに変調を来す原因を脳神経系及び視覚感覚神経系の発生と分化異常が関係していると考えた。神経系の初期発生は、モデル動物としてマウスよりも、ゼプラフィッシュの受精卵が適している。ゼプラフィッシュの受精卵は透明であり、発生初期から神経管が完成し、心拍が始まる心臓血管系の発生段階が、光学顕微鏡で容易に観察できる。そこで、ノックアウトマウスを使った実験系の推進は中止し、ゼプラフィッシュの受精卵を使ったCRISPR Cas9系で遺伝子エディディングによる遺伝子発現抑制及び発現の活性化を試みる実験系で、研究を推進することにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
2アリルともKOされてたATBF1ノックアウトマウス(ホモノックアウト)は胎児死亡することが研究推進の大きな障壁になっている理由である。ATBF1ノックアウトマウス(ヘテロノックアウト)は生育できるので、KOの効果を解析できる可能性を追求してきた。しかし残念ながら、ATBF1ノックアウトマウス(ホモノックアウト)のような劇的な形態変化は認められなかった。英国の研究グループによる行動解析結果によると、形態的変化に乏しいものの、サーカディアンリズムに変調を来すことが報告された。私たちは、サーカディアンリズムに変調を来す原因を脳神経系及び視覚感覚神経系の発生と分化異常が関係していると考えた。神経系の初期発生は、モデル動物としてマウスよりも、ゼプラフィッシュの受精卵が適している。ゼプラフィッシュの受精卵がは透明であり、発生初期から神経管が完成し、心拍が始まる心臓血管系の発生段階が、光学顕微鏡で容易に観察できる。そこで、ノックアウトマウスを使った実験系の推進は中止し、ゼプラフィッシュの受精卵を使ったCRISPR Cas9系で遺伝子エディディングによる遺伝子発現抑制及び発現の活性化を試みる実験系の使用を計画し、研究を推進することにした。
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