研究課題/領域番号 |
16K11030
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓悦 東邦大学, 医学部, 教授 (60301818)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 骨転移 / 酢酸アビラテロン / エンザルタミド / アルカリフォスファターゼ / プロテオミクス / 分子標的薬 / 分子診断 |
研究実績の概要 |
本研究では、Proteomics技術を出発点に、去勢抵抗性の分子機構の解明を進めるとともに,より成熟した治療戦略の確立を目指して遺伝子多型や人工知能を応用したPrecision medicineの確立を試みることを目的としている。その成果に関しては、基礎的研究から出発して、分子診断や、分子標的薬への臨床応用を目指している。 今年度は、分子診断のひとつとして、アミノ酸トランスポーターを標的とするNMK-36(米国でのほぼ同様の分子はFACBC)のPET試薬の有効性に関しての報告を行った。転移癌での有効性は十分に示せたものの、ハイリスク限局癌でのリンパ節転移の描出に関しては、感度が十分でなく、今後の課題を残した。 新規の経口LHRHアンタゴニスト製剤の有効性に関して、日本人データを他施設と共同で報告した。現在、国際共同第3相試験へと進んでいる。酢酸アビラテロンを未治療転移性前立腺癌に使用する国際共同第3相試験であるLATITUDEの日本人集団に関して、その有効性と有害事象などを報告した。 PTEN遺伝子異常に関与するAkt阻害薬や、DNA修復機構の異常に関書するPARP阻害剤に関しても、基礎的および臨床的研究を進めている。さらに、去勢抵抗性前立腺癌の進行に関与する分子機構に関わる細胞周期関連遺伝子などについても分子標的としての可能性を解析する。 Proteomics技術を用いた,新規薬剤(アビラテロン・エンザルタミド)使用前後において発現増強する血清蛋白の同定とその機能解析については、いくつかの候補分子に関して、vitroの実験系にて、その有効性の確認を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Proteomics技術を出発点に、去勢抵抗性の分子機構の解明を進めるとともに,より成熟した治療戦略の確立を目指して遺伝子多型や人工知能を応用したPrecision medicineの確立を試みることを目的としており、以下の4点を中心に解析を進めている。 <1> Proteomics技術を用いた,新規薬剤(アビラテロン・エンザルタミド)使用前後において発現増強する血清蛋白の同定とその機能解析:新規薬剤にて治療された去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)症例からInformed consent取得後に採取され凍結保存された血清を使用する。同一患者から経時的に採取された治療前と治療開始後の血清を解析に使用する。蛋白解析にはprotein chip system を用いて表面増強型レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析装置にて血清を網羅的に解析し,目的のタンパク質を検索を進めている。<2>薬剤使用前後でのCRPC患者の血清中の各種アンドロゲン・サイトカイン濃度の測定:薬剤使用前後でのCRPC患者の血清中の各種アンドロゲン濃度(テストステロン・DHEA・アンドロステンジオール・アンドロステンジオンなど)の測定に関しては、十分な検体が採取できていない。<3>新規薬剤使用前後でのCRPC組織中のアンドロゲン受容体異常の検索とその機能についての解析:CRPC患者におけるアンドロゲン受容体(AR)の異常について,Hyperactivated typeのAR遺伝子異常の検索をNGSにて検索する。また遺伝子異常のパターンとアンチアンドロゲン剤への結合様式を,mutagenesisで作製したvectorへ導入しbinding assayなどで機能的に検討を進めている。<4>新規薬剤への反応性や予後についての遺伝子多型の解析と統計モデルの作成:上記3点の解析を優先している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、Proteomics技術を出発点に、去勢抵抗性の分子機構の解明を進めるとともに,より成熟した治療戦略の確立を目指して遺伝子多型や人工知能を応用したPrecision medicineの確立を試みることを目的としており、以下の4点を中心に解析を進めている。 <1> Proteomics技術を用いた,新規薬剤(アビラテロン・エンザルタミド)使用前後において発現増強する血清蛋白の同定とその機能解析。<2>薬剤使用前後でのCRPC患者の血清中の各種アンドロゲン・サイトカイン濃度の測定。<3>新規薬剤使用前後でのCRPC組織中のアンドロゲン受容体異常の検索とその機能についての解析。<4>新規薬剤への反応性や予後についての遺伝子多型の解析と統計モデルの作成。 特に<1><2><3>に関しては、学内外を含めた蛋白質の解析技術に優れた研究室との共同研究を推進しつつある。今後に関しては、おおむね順調に推移している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の研究の推進方策の欄にも記入した通りである。本研究では、Proteomics技術を出発点に、去勢抵抗性の分子機構の解明を進めるとともに,より成熟した治療戦略の確立を目指して遺伝子多型や人工知能を応用したPrecision medicineの確立を試みることを目的としており、以下の4点を中心に解析を進めている。 <1> Proteomics技術を用いた,新規薬剤(アビラテロン・エンザルタミド)使用前後において発現増強する血清蛋白の同定とその機能解析。<2>薬剤使用前後でのCRPC患者の血清中の各種アンドロゲン・サイトカイン濃度の測定。<3>新規薬剤使用前後でのCRPC組織中のアンドロゲン受容体異常の検索とその機能についての解析。<4>新規薬剤への反応性や予後についての遺伝子多型の解析と統計モデルの作成。 特に<1><2><3>に関しては、学内外を含めた蛋白質の解析技術に優れた研究室との共同研究を推進しつつある。しかしながら、2020年初からのコロナ禍の影響もあって、未使用分が発生した。現在、他研究室との協力を含めて、体制の立て直しをしており、今後十分に研究が推進されると考えている。 次年度の研究予定としては、今年度の残金を含めてPCの購入を行う予定である。さらに購入したPCを用いて、実験計画を促進して、統計処理などを行ってデータ処理を進めるとともに、学会発表および論文報告に向けて準備を進めていく予定である。
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