研究課題/領域番号 |
16K11033
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
東 治人 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40231914)
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研究分担者 |
稲元 輝生 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20330087)
宮武 伸一 大阪医科大学, 医学部, 特別職務担当教員(教授) (90209916)
鈴木 実 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (00319724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膀胱温存 / 浸潤癌 / BOAI / BNCT |
研究実績の概要 |
「研究の目的」血流塞栓膀胱動脈選択的動脈内投与法(baloon occluded arterial infusion: BOAI法)と “癌選択的な標的粒子線治療” 硼素中性子捕捉療法(BNCT)を併用することによって、①膀胱全摘の適応である局所浸潤性膀胱癌に対して副作用を殆ど認めない新規膀胱温存療法を確立すること、②高齢、あるいは基礎疾患のために膀胱全摘が困難であり姑息治療のみを余儀なくされていた症例にも根治治療を可能にすること、③これまでの抗癌剤治療に比較して副作用が極めて少ない新規治療を開発すること、を目的としている。 「研究内容」 “癌選択的な標的粒子線治療” BNCTは、癌細胞選択的に取り込まれる硼素化合物を予め投与しておき、熱中性子線を照射することにより、硼素を殆ど取り込まない正常細胞は障害されないが、硼素を多く取り込んだ癌細胞では細胞内部で硼素と熱中性子の核反応が生じ、核反応により発生した高エネルギーが癌細胞を選択的に破壊する、「正常組織温存+癌細胞選択的破壊治療」である。本治療法の大きな利点は、核反応により発生する粒子は飛距離10ミクロン以下のため、周囲細胞に影響を及ぼさず、硼素を取り込んだ癌細胞のみを選択的に破壊できることであり、また、本治療の成否は、いかに十分量の硼素化合物を癌細胞に選択的に集積させるかにかかっている。そこで我々は、1) 膀胱周囲組織に極めて高濃度の硼素化合物を投与可能とする“BOAI法”(血流塞栓用バルーン付カテーテルを用いて膀胱動脈選択的に硼素化合物を動脈内投与する)を用いて、2)膀胱癌細胞、特に核内に選択的に集積、移行するべく特殊加工した“膀胱癌細胞親和性硼素化合物”を作成、投与することによって、膀胱癌細胞により選択的に高濃度の硼素化合物を取り込ませ、癌細胞を選択的に破壊するBOAI-BNCT法を考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の研究進捗状況 A 「膀胱癌細胞特異的親和性を持つ硼素化合物の開発と癌細胞核内移行の確認」 核移行シグナル”NLS”を付加し本モデルを用いて通常静脈投与に比較して、バルーン塞栓動注法(BOAI法)による膀胱癌細胞への硼素化合物の取りこみが、10倍以上に増加していることを確認した。 B 「In vitroにおける、膀胱癌細胞親和性硼素化合物の癌細胞選択的核内移行とBNCT治療効果の確認」 1)組織型の異なる膀胱癌細胞株 T24(尿路上皮癌)、および、非癌細胞株CRL-2096にそれぞれ膀胱癌細胞親和性硼素化合物を加えて培養し、癌細胞と非癌細胞、および、組織型の異なる癌細胞における細胞内硼素化合物導入率の相違を測定した(KUR-BSH定量システムにて測定)。2) 上記癌細胞と非癌細胞にそれぞれ膀胱癌細胞親和性硼素化合物を加えて培養し、中性子を照射することによって癌細胞と非癌細胞におけるBNCT治療による殺細胞効果の違いを検討した結果、癌細胞により多くの硼素化合物が取り込まれ、非癌細胞に比較して細胞障害が強いことを確認した。 C「マウス膀胱癌モデルを用いたin vivo におけるBOAI-BNCT療法の膀胱癌選択的治療効果の確認」 1) マウス膀胱癌 BOAIモデルの作成 0.05% BBNを用いたマウス膀胱癌モデルにmicrosurgery techniqueにて総腸骨動脈内にカテーテルを留置、動脈をクランプして抗癌剤を投与してマウス膀胱癌BOAIモデルを作成した。2) 通常の静脈内投与に比較して10倍以上の抗癌剤が膀胱、および、周囲組織に投与されたことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
A)「マウスビジュアル膀胱癌転移モデルを用いた、BNCT療法の治療効果の検討」 1) 膀胱癌細胞株T24のゲノム内にLuciferase発現遺伝子を導入したFSR-T24を作成し、これをマウスに107 ずつ静脈内投与することによって“転移の部位、状態が目で見てわかる、マウスビジュアル膀胱癌転移モデル”を確立する (癌細胞が複性した後にも発光することによって、転移巣をビジュアルで確認できる)。2) このモデルに硼素化合物を静注投与し、各転移巣における硼素化合物の取り込み状況をKUR-BSH定量システムを用いて定量する、転移巣の大きさを目で見て測定可能であり、血液データをチェックすることにより、治療効果と副作用を同時に判定しつつ生存期間の延長も検討できる(実際の臨床に即した極めて有用なモデルである)。 B) 「ビーグル犬膀胱癌モデルにおける、BOAI-BNCT膀胱温存療法の有効性と安全性の検討」 1)ビーグル犬膀胱癌モデル:生後6か月のビーグル犬にMethyl-N-nitrosourea(MNU)を膀胱内注入→以後、BBNを週6回連日経口投与することによって浸潤性膀胱癌モデルを作成する。2) BOAI法による硼素化合物投与と膀胱癌細胞内選択的移行の確認:3) 血流塞栓用バルーン付カテーテルを用いて膀胱、および、膀胱周囲組織に極めて高濃度の硼素化合物を投与し、膀胱癌組織、および、正常粘膜、それぞれの組織におけるBSH濃度をICP-AESを用いて測定する(癌細胞に選択的に取り込まれることを確認)。4) 治療効果の判定: ①実験群:治療後4週目でsacrificeする群(n=4)と、長期観察群(n=4)を作成 ② 有用性、安全性評価:定期的に超音波検査を施行し、腫瘍を観察するとともに、体重、尿、便性状、および、血液生化学検査を施行し有害事象を検索する。 。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者(鈴木)にて購入予定であった、消耗品に関して、平成29年度の購入希望で変更があった為。
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次年度使用額の使用計画 |
分担研究者(鈴木)にて、消耗品購入に使用する予定である。
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