研究実績の概要 |
Micro-RNA (miRNA)は膀胱癌を含めた泌尿器癌において発現が正常組織に比較して変質していることが示されている。個々のmiRNAは膀胱癌の発生過程においても多種の細胞内パスウェイを制御することが知られている。治療抵抗性となった膀胱癌を制御する特定のmiRNAの発現プロフォールを同定し、それらの組み合わせを用いて膀胱癌の生存を予測することを本研究で目指した。候補となるmiRNAsの検索にはアグレッシブ癌と非アグレッシブ癌の組織を3D-Gene miRNA labeling kit を用いて比較検討した(Toray, JAPAN)。生存指数モデルを作成するために、9つのmiRNAsをCancer Genome Atlas (TCGA) データベースを通して検討した [TCGA Data Portal [https://tcga data.nci.nih.gov/tcga/tcgaHome2.jsp]]。miRNAの発現データと生存の有無、ステージ、グレードを含む84検体の膀胱癌の臨床データを検討した。カプランマイヤーとログランクテストを用いて2つのグループ間で生存比較を行った。 miRNAs (hsa-miR-99a-5p, hsa-miR-100-5p, hsa-miR-125b-5p, hsa-miR-145-5p, hsa-miR-4324, hsa-miR-34b-5p, hsa-miR-29c-3p, hsa-miR-135a-3p, hsa-miR-33b-3p)の発現異常がアグレッシブ癌の組織で見つかった。生存を予測するか否かを見極める為に膀胱癌のTCGA データセットを用いて生存状況と9つのmiRNAsの発現強度を84名の膀胱癌患者で検討した。その結果6つのmiRNAs (hsa-miR-99a-5p, hsa-miR-100-5p, hsa-miR-125b-5p, hsa-miR-4324, hsa-miR-34b-5p, and hsa-miR-135a-3p)上昇は高リスク癌と関わり3つのmiRNAs (hsa-miR-145-5p, hsa-miR-29c-3p, and hsa-miR-33b-3p)上昇は低リスク癌と関わっていた。高リスク癌でのmiRNAsの発現様式は低リスク癌に比較して優位に生存を予測し得た (HR = 7.05, p < 0.001)。
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