研究課題
我々は網羅的発現解析手法 (HiCEP法)を用い腎細胞癌の発見や病期診断に応用しうるバイオマーカーの探索を行った。HiCEP 法は256対のプライマーを用いてcDNAを網羅的に増幅する方法であり、低発現量のRNAも高感度・高信頼性で検出可能であり、再現性が高く定量的な発現解析が可能である。しかし検出した転写物の配列情報を得るには、ピーク分取によるTAクローニングなどの煩雑な工程を必要とする。そこでHiCEP法と次世代シーケンサー(NGS)による解析を組み合わせることで、腎癌の遺伝子発現データベースの構築を試みた。腎癌患者83症例の手術検体を癌部と肉眼的非癌部に分けて採取した。病理組織が淡明細胞型の代表的な6症例にHiCEP法による解析を行った。癌部および非癌部の組織からtotal RNAを抽出後しcDNAを合成した。ATGCの4塩基全ての組み合わせ(4の4乗=256通り)に相当する256対のプライマーを用いてcDNAを増幅し、HiCEPフラグメントを作成し、キャピラリー電気泳動により転写物の発現量を解析した。続いて作成したHiCEPフラグメントからライブラリーを作成し、NGSによる配列情報の解析を行った。NGSにより配列決定を行い、HiCEPフラグメントのカタログ化にヒトを含めた哺乳類を対象とした研究で初めて成功した。さらに非癌部と比べ癌部で5倍以上発現量の多い複数のピークが同定され、NGSによる検討で腎癌マーカーの候補分子を同定した。12個の候補遺伝子が同定され(8例が腎癌との関連性が報告されているが、4個は腎癌との関連性が報告されていない)、これらの遺伝子に関してリアルタイムPCRを用いた組織発現解析を行った。特に4つの新規遺伝子は他の腎癌検体においても非癌部と比較して発現が高いことが確認され、早期診断のための有用なマーカーとなる可能性がある。
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