研究課題/領域番号 |
16K11040
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
重原 一慶 金沢大学, 附属病院, 講師 (20595459)
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研究分担者 |
北川 育秀 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (00452102)
飯島 将司 金沢大学, 附属病院, 助教 (70749168)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / 陰茎癌 / 前立腺癌 / 尿路性器感染症 |
研究実績の概要 |
今年度は、1)陰茎癌におけるHPV感染率の調査、2)泌尿器科腫瘍における尿路HPV感染率に関する調査、の2つを昨年度から引き続き症例を増やして行った。 1)陰茎癌におけるHPV感染率の調査は、昨年度から引き続き、症例数を34例まで収集した。パラフィン切片からDNAを採取し、HPV-DNAの検出率および型判定を実施したところ、HPV検出率は32%(11例)であり、そのうち9例はHPV16であった(2例はそれぞれ33、68型)。また、免疫染色・in situ hybridization(ISH)を用いて検討が進んだ28例においては、HPV陽性検体の91%(10例)でISHで腫瘍組織内のHPV-DNAの存在を確認し、82%(9例)で、HPVのoncogenic domainであるHPVE7のsurrogate markerであるp16-INK4aの腫瘍内の発現を確認した。一方、HPV陰性ではISHでHPV-DNAシグナルは確認できず、p16-INK4aも弱発現か、または発現は認めなかった。陰茎癌の30%程度はHPV感染が関連しており、感染したウイルスが腫瘍発生に関連していたことを裏付けるデータと思われた。 2)泌尿器科腫瘍における尿路HPV感染率の調査を行うために、泌尿器科外来を受診した患者845例より尿検体を採取した。有効検体803例におけるHPVおよび高リスク型HPV検出率はそれぞれ6.2%、3.1%であった。男性の尿検体におけるHPV検出率に年齢差は認めなかった。疾患別にみると、尿道炎患者における尿路HPV検出率がもっとも高かった(Odd ratio: 4.56, p=0.001)。一方、尿道炎を除く730例で検討すると尿路性器癌の患者からのHPV検出率が有意に高かった(OR=2.844, p=0.040)。これをうけ、尿路性器癌患者に的を絞り現在検体を収集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)陰茎癌とHPV感染との関連性については、その中間報告を日本性感染症学会雑誌に報告した(2017年掲載)。また、検体採取は一旦終了とし、あとはISHや免疫染色による追加検討を行うのみの状況である。 2)泌尿器科腫瘍における尿路HPV感染率の調査についても、上記実績の概要についてはjournal of infection chemotherapyに投稿済であり、投稿先からの返事に対してminor reviseを投稿している状況である。また、この中間結果を踏まえ、尿路性器癌患者に的を絞った尿検体の収集をすでに開始している。 上記のとおり、研究はおおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
陰茎癌とHPV感染との関連性については、あと少数例をISHや免疫染色を用いて調査すればよい段階となっており、34例で結果をまとめて、来年度には英文誌に投稿、受理まで進めたいと考えている。 また、尿路性器腫瘍における尿路HPV感染率の調査については、前述したとおり、尿路性器癌患者に的を絞った検体収集を開始している。さらに尿からHPVが陽性となった患者においては、尿細胞診も行い、ISH法を用いて尿路上皮または異形尿路上皮にHPVが感染しているかについても検討したいと考えている。また、膀胱または前立腺腫瘍組織を用いた腫瘍組織内のHPV感染の有無を調査し、尿からHPVが検出されることの意義について考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画のとおりにおおよそ研究は進展しているので、複数回購入を予定していた実験キットの購入をせずに済んだ分、残額が生じた。 その分は次年度に論文投稿の費用として充てる予定である。
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