研究課題/領域番号 |
16K11042
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
芳山 充晴 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (20422694)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 下部尿路機能 / 求心路 / 膀胱 / 蓄尿障害 / 外尿道括約筋 / 興奮性グルタミン酸受容体 / 酸感受性イオンチャネル / マウス |
研究実績の概要 |
酸に感受性があるtransient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)はカプサイシンにより活性化される。そして、カプサイシン全身投与による初期の刺激後に求心性C神経線維は脱感作される。この動物モデルを用い、マウス下部尿路機能における求心性C線維の役割を調べた。結果、正常マウスと脊髄損傷マウスの両者においてカプサイシン感受性C求心性線維の脱感作は膀胱容量に影響しないことが分かった。 一方、脊髄損傷マウスでみられる蓄尿期の不安定膀胱収縮はカプサイシン投与群で約62%減少した。これは、脊髄損傷マウスにおいてカプサイシン感受性C求心性線維が不安定膀胱収縮惹起に関与することを示している。TRPV1遺伝子欠損(脊髄正常)マウスでは、野生型では通常みられない不安定膀胱収縮が頻発した。これは、TRPV1を介する経路が膀胱活動を安定させる役割を担うことを示唆する。以上の結果は、脊髄正常マウスと脊髄損傷マウスでは、膀胱活動安定性に関してカプサイシン感受性C求心性線維の役割が正反対であることを示している。但し、両者に共通して、カプサイシン感受性C求心性線維はマウスの膀胱容量制御には関係していない。 酸感受性acid-sensing ion channel (ASIC)阻害薬を用いたin vivoシストメトリー実験では、ASIC阻害薬腹腔内投与が一回排尿量もしくは膀胱容量を約27%増加した。更に、pH3に調整された希釈酢酸の膀胱内注入によって頻尿となったマウスへASIC阻害薬を腹腔内投与したところ、一回排尿量もしくは膀胱容量が約70%増加した。これらの結果は、正常膀胱求心路刺激と侵害性膀胱求心路刺激の両方でASICを介し、興奮性膀胱求心性伝達に関わっていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに集積された知識と技術が、現在の研究の推進にとても役立っている。また、他の研究機関との共同研究を通して、当施設のみでは容易に成しえない実験を実施できたことが研究の進展に大きく貢献している。
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今後の研究の推進方策 |
代謝型グルタミン酸を介した膀胱求心路に関して、更に深く掘り下げてその役割を解明する予定である。この際、膀胱求心路の障害モデルとして脊髄損傷マウスを用いる予定。脊髄損傷マウスの病態を蓄尿期のみならず排尿期のにおいても詳細に解析し、代謝型グルタミン酸経路と脊髄損傷に基づく下部尿路機能障害の関係を丁寧に解析して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた複数の学会への参加が一身上の都合で出来なかったため。加えて、代謝型グルタミン酸研究において、in vitro研究、組織学的研究が若干遅れているため、その費用が次年度へ持ち越されることになった。 次年度には、予定している実験を遂行し、更に複数の海外学会にて本研究成果を発表、論文化し国際的科学系ジャーナルでの発表を予定している。
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