マウスの下部尿路機能制御において、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ1(mGluR1)表現型に雌雄差があることを、mGluR1遺伝子欠損(KO)マウスを用いて明らかにした。 12-13週齢のmGluR1-KOとその野生型(WT:C57BL/6N)を対象に、代謝ケージ内における覚醒下自発排尿行動評価と、除脳無麻酔下での反射排尿シストメトリー検査を行い、下部尿路機能を総合的に精査した。除脳を含む手術はセボフルレン麻酔下で行った。自発排尿行動評価では、一日飲水量、一日排尿量、一日排尿回数、一回排尿量を調べ、反射排尿シストメトリー検査では、一回排尿量、排尿容量閾値、排尿効率、最大排尿圧を測定した。 自発排尿行動評価:雌において、KOはWTと比べ、有意に一回排尿量が多く(79.3%増)、一日排尿回数が少なかった(49.1%減)。しかし、一日飲水量、一日排尿量では、KOとWTに差が無かった。一方、雄では全ての検討項目でKOとWTに差が無かった。 反射排尿シストメトリー検査:雌において、KOはWTと比べ、一回排尿量と排尿容量閾値が大きく(それぞれ、89.5%増と92.2%増)、排尿効率が低かった(3.5%減)。他方、雄では、KOがWTに比べて、有意に大きな排尿容量閾値(36.2%増)と低い排尿効率(4.0%減)を呈したものの、一回排尿量では差を示さなかった。 本研究は、mGluR1が膀胱からの興奮性求心性信号伝達に関与し、蓄尿期において重要であることを示した。一方、その関与の程度には雌雄差があり、雄に比べて雌でmGluR1欠損の影響が顕著であった。この結果は、研究を行う際、調査対象分子の表現型に性差がある可能性を念頭に置く必要があることを示唆する。近年、医学研究において、遺伝子関連の表現型や薬物療法への反応性に性別を考慮することの重要性が提唱されており、本研究結果はそれに同調する。
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