研究実績の概要 |
平成29年度は、研究実施計画に沿って医師主導治験による男性腹圧性尿失禁に対するADRCs傍尿道注入治療の組み入れ患者より皮下脂肪組織を治療用とは別に100g採取し、CelutionTM(サイトリ社、サンディエゴ、米国)によりADRCsを分離し、細胞特性の検討を行った(名古屋大学医学部倫理委員会承認済)。 5例の患者から採取した脂肪組織からADRCsを分離後、細胞数及び生存率の測定、表面マーカー測定、サイトカイン分泌能測定、コロニー形成能測定及び平滑筋への分化能測定を行った。分離ADRCsは約4×106個得られ、CD31、CD34、CD44、CD45の表面マーカー発現が認められたが、Stro-1の発現はほとんど認められなかった。平滑筋分化培地培養ではαSMA、Calponin等の平滑筋マーカー発現が認められ、約1.5%の細胞がコロニーを形成した。ADRCsは様々な細胞から構成され、平滑筋への分化能があることが確認された。 さらに、3例の患者から採取したADRCs、培養脂肪幹細胞において付着細胞と浮遊細胞培養を行い、総合的に数十種類のサイトカインをマルチプレックス法で測定評価した。培養脂肪幹細胞では検出限界以下であったサイトカインがADRCsで多数検出された。また、ADRCsで有意に高く検出されているサイトカイン (IL-6, GRO, MCP-1)、有意差はないが培養脂肪幹細胞、ADRCsともに検出されたサイトカイン (EOTAXIN, FLT-3L, IL-7, INFα, RANTES, VEGF, FGF-2, Fractalkine) に分けられた。測定した41種類のサイトカインの中では、培養脂肪幹細胞で有意に高く検出されたサイトカインはなかったことからも、ADRCSは培養脂肪幹細胞と比較して有意に多彩な再生サイトカインを分泌する可能性が示唆された。
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