研究課題
現在、膀胱再生は、手間と技術を要する上に、再生細胞の効率が低いなど、多くの課題がある。磁気ターゲティングは、これまでの組織再生の考え方と大きく異なる革新的な手法である。MRI用造影剤であるフェルカルボトランを骨髄間葉系幹細胞に取り込ませることで、細胞は容易に磁性体化する。さらに、組織欠損部に強磁場をかけることで、磁性体化幹細胞は強力で効率的な移植細胞源となる。本研究では、磁気ターゲティングを用いた磁性体化骨髄間葉系幹細胞による組織再生を検証することを目的とした。オス日本白色家兎に対して、膀胱前壁に電気凝固を施行し、膀胱損傷モデルを作成した。膀胱内に1×106個の磁性体化骨髄間葉系幹細胞を注入し、腹壁に1Tの永久磁石を10分間当てることで膀胱前壁に磁性体化骨髄間葉系幹細胞を誘導した(MSC M+群、n=4)。対照として、注入したのみの群(MSC M-群、n=4)、PBS(phosphate-buffered saline)20 mlを注入した群(control群、n=4)を設定した。膀胱組織の再生について、MRIによる画像評価を行い、MSC+群では、MSC M-群、control群と比較して有意な膀胱組織の再生を認めた。HE染色やαSMA染色による組織学的評価においても、組織再生を検討し、同様にMSC+群では、MSC M-群、control群と比較して有意な膀胱組織の再生を認めた。磁気ターゲティングを用いた磁性体化骨髄間葉系幹細胞による組織再生は、膀胱組織損傷に対して有効な治療となりうる可能性が示唆された。今回、私たちが開発した磁気ターゲティングによる膀胱組織再生は、今後有効な治療選択肢となることが期待される。
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Regen Ther.
巻: 10 ページ: 46-53
10.1016/j.reth.2018.10.007