研究課題/領域番号 |
16K11051
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
森 健一 大分大学, 医学部, 助教 (00579013)
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研究分担者 |
三股 浩光 大分大学, 医学部, 教授 (60219714)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エストロゲン受容体 / エストロゲン受容体β / エストロゲン受容体α / 前立腺炎 |
研究実績の概要 |
平成28年度は以下の研究を行った。 ①ホルマリン誘発性前立腺炎群とコントロール群における尿流動態学的な比較検討。 8週齢雄S-Dラットの前立腺前葉被膜下にマイクロシリンジを用いて5%ホルマリン液(50uL)を注入し、ホルマリン誘発性慢性前立腺炎モデルを作成した。同様に生理食塩液50uLを注入したものをコントロールモデルとした。モデル作成4週後に覚醒下シストメトリーによる尿流動態学的検査を行った。ホルマリン誘発性慢性前立腺炎モデルでは排尿間隔の短縮と蓄尿期の排尿筋不随収縮を認め過活動膀胱の状態が明らかとなった。 ②ホルマリン誘発性前立腺炎群とコントロール群の前立腺組織におけるERα、ERβ、TNFα、iNOS、NF-κB、およびE-cadherinの分子生物学的な比較検討。 ①の方法で各モデル作成を行い、モデル作成4週後に前立腺を採取した。前立腺組織での炎症部位を明らかにする目的で、HE染色による組織学的評価に加え、前立腺組織におけるERα、ERβ、TNFα、iNOS、NF-κB、およびE-cadherinのmRNA発現を各群で比較検討した。ホルマリン誘発性慢性前立腺炎ラットの前立腺基質および上皮においてERαと炎症性サイトカインのmRNA発現亢進、さらにERβのmRNA発現低下を認めた。また、ホルマリン誘発性前立腺炎モデル作成4週後のRT-qPCRの評価では、前立腺組織においてERβのERαに対する発現比(ERβ/ERα)がコントロール群に比べ減少していること、TNFα、iNOSのmRNA発現がコントロール群に比較し有意に増加していることを確認した。ERαとERβについては免疫組織染色も行い発現量と局在の変化についても比較検討も行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホルマリン誘発性前立腺炎ラットではコントロール群と比較し前立腺組織における炎症性サイトカイン増加(TNFα、iNOS、NF-κBの発現増強)を認め、それに伴い頻尿などの膀胱機能異常を起こすことを明らかにすることができた、さらに、前立腺炎に伴い前立腺組織におけるERβの発現低下とERα発現増加を確認でき、ERαに対するERβの発現比率低下(ERβ/ERα)が非細菌性前立腺炎に関与していることを確認できた。この結果を国際学会及び国内学会において研究発表しており、平成28年度の研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究結果よりERαに対するERβの発現比率低下(ERβ/ERα)が前立腺組織内の非細菌性炎症炎の一因と考えているため、今後はERβ刺激薬である3αdiolをホルマリン誘発性前立腺炎ラットに経口投与し非投与群と尿流動態学的検査の比較検討を行うことで、投与群における頻尿や排尿筋無抑制収縮の改善を明らかにする。さらに、投与群と非投与群における前立腺組織において分子生物学的な比較検討も併せて行う。投与群におけるERα、TNFα、iNOS、NF-κB、およびE-cadherinの発現低下、さらにERβの発現増加を確認することで非細菌性慢性前立腺炎ラットにおける3αdiolの抗炎症効果を明確にする予定である。ERβ刺激薬である3αdiol投与により前立腺組織においてERβ/ERαの発現比が改善することで、抗炎症効果を発揮し前立腺組織の炎症を改善させると考えている。また、膀胱組織での分子生物学的な比較検討も行う予定である。特に、排尿筋過活動に関与する温度感受性イオンチャネル型受容体(TRPA1、TRPV1)、プリン受容体(P2X2、P2X3)の発現を比較し、投与群における発現低下を確認することで、非細菌性慢性前立腺炎ラットにおける3αdiolの排尿筋過活動に対する治療効果を明確にしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該見積りよりも研究費が安くなったため、未使額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については、ラット膀胱の組織学的研究費として使用する予定である。
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